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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2017.11.10]

中川郁が見事にオーロラ姫デビューを飾った、牧阿佐美バレヱ団の『眠れる森の美女』

牧阿佐美バレヱ団
『眠れる森の美女』テリー・ウエストモーランド:演出振付(M.プティパ版に基づく)

牧阿佐美バレヱ団の『眠れる森の美女』はプティパの原振付を、ステパノフ式のノテーションにより最大限に尊重した英国ロイヤル・バレエ版を継承するテリー・ウエストモーランドの演出振付である。牧阿佐美バレヱ団は1982年にこのヴァージョンの『眠れる森の美女』を初演した。当時のことを三谷恭三総監督と賀川祐之舞台監督が、公演パンフレットの中で語っているが、テリー・ウエストモーランドの振付や舞台装置や衣装などに対する厳格な指導ぶりが垣間見えて興味深い。こうした厳格さが、当時の日本のバレエに非常に良い影響を与えたのだろう、と容易に推測できる。

tokyo1711c_09.jpg 中川郁、菊地研 撮影:山廣康夫

牧阿佐美バレヱ団の『眠れる森の美女』は2組のキャストが組まれ、初日はジョージア国立バレエ団から招かれたゲスト、ヌーツァ・チェクラシヴィリがオーロラ姫、フィリップ・フェドゥロフがフロリモンド王子を踊り、翌日は中川郁と菊地研が踊った。リラの精は佐藤かんなと三宅里奈、王妃をエリザベス・マクゴリアンと坂西麻美、フロリン王女は青山季可と米澤真弓が踊り、カラボスとブルーバードは両日とも保坂アントン慶と清瀧千晴だった。
私は中川郁がオーロラ姫デビューとなった日を観た。中川は近年、『リーズの結婚』の主役や『三銃士』のミレディ役などのどちらかといえばキャラクター的な役柄で評価を高めてきたので、オーロラ・デビューどうかと注目した。オーロラ役は登場するとすぐに、16歳の王妃として宮廷の様式を身につけ、若いフレッシュな気品と美しさを表現する「ローズアダージオ」を踊らなければならず、中川はバランスで少し苦戦したものの、終始、主役らしい堂々とした踊りで観客を魅了した。全身を使った気持ちのこもった舞台だった。菊地研のヴェテランらしいサポートと表現力が中川の踊りを支えていたことは言うまでもない。
プロローグの美、強さ、優雅、雄弁、活気などの妖精たちや第3幕の宝石の精たちの踊りもそれぞれしっかりした踊りを見せた。「白猫」の日髙有梨は可愛らしく、元吉優哉の長靴をはいた猫と息の合った踊りだった。米澤真弓と清瀧千晴によるフロリン王女とブルーバードのパ・ド・ドゥも活気にあふれていて見応えがあった。
さすがにこれだけたくさんの出演者がいるプロローグ付き全3幕のバレエとなると、ソリストに実力者揃いのカンパニーの伝統と実力が如実に現れるものだ、と実感させられた充実した公演であった。
(2017年10月8日 文京シビックホール 大ホール)

tokyo1711c_04.jpg 菊地研(フロリモンド王子)撮影:山廣康夫 tokyo1711c_05.jpg 細野生(サファイアの精)撮影:山廣康夫
tokyo1711c_06.jpg 清瀧千晴(ブルーバード)撮影:鹿摩隆司 tokyo1711c_08.jpg 太田朱音(ダイヤモンドの精)撮影:山廣康夫
tokyo1711c_07.jpg 清瀧千晴、米澤真弓 撮影:山廣康夫 tokyo1711c_12.jpg 保坂アントン慶(カラボス)撮影:山廣康夫
tokyo1711c_10.jpg 中川郁(オーロラ)撮影:山廣康夫 tokyo1711c_03.jpg チェクラシヴィリ、フェドゥーロフ
撮影:鹿摩隆司(他日公演)
tokyo1711c_01.jpg 「眠れる森の美女」撮影:鹿摩隆司 tokyo1711c_02.jpg 「眠れる森の美女」撮影:鹿摩隆司
tokyo1711c_11.jpg 中川郁(オーロラ)、菊地研(フロリモンド王子)、三宅里奈(リラの精)撮影:山廣康夫