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黒部の野外劇場で初演、利賀村、スロベニア海外公演を経て、金森穣演出振付『マレビトの歌』が新演出により本拠地とさいたま芸術劇場で凱旋公演

ワールドレポート/東京

小野寺 悦子

りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館専属舞踊団Noism Company Niigataが、黒部、利賀村、スロベニアと上演を重ねてきた金森穣演出振付の『マレビトの歌』を、演出を新たにした改訂版として本拠地・新潟と彩の国さいたま芸術劇場で上演する。

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黒部シアター2023春より

初演は2023年の「黒部シアター2023春」。黒部舞台芸術鑑賞会の吉田忠裕と演出家・鈴木忠志の招きにより、Noism初の野外公演として富山県黒部市の前沢ガーデン野外ステージで創作・発表している。緑の丘に囲まれた円形の舞台空間を目の当たりにし、「月が見下ろす丘で行われる、マレビトが来訪する儀式のイメージがわいてきた」という金森。近年彼が取り組んできたテーマ " 個と集団 " " 彼岸と此岸 " に、「マレビト」の概念をまじえ、生まれたのが『セレネ、あるいはマレビトの歌』だった。
「マレビト」は民俗学者の折口信夫が提唱した概念で、他界(共同体の外部)から現世を訪れる神や霊的な存在を指す。劇中には霊的存在として井関佐和子が登場するのが、そこには確固たる集団があり、彼女は一人異質な者として来訪する。相容れない個が彼岸からあらわれたとき、そこで何が起こるのかーー。
音楽は全編エストニアの作曲家アルヴォ・ペルトの楽曲を使用。作品に物語はなく、シーンごとにテーマをもたせた演出振付で、抽象性を高く展開していく。クリエーションは新潟と黒部で行われ、この時初めてNoismメンバーで合宿を敢行した。緑に囲まれた隔離された空間で、金森に連日激を飛ばされ、作品と向き合う。若い舞踊家たちにとって、過酷であると同時に、著しい成長の時間でもあっただろう。
衣裳は簡素で、美術もない。身体に焦点をあて、大自然の中に舞踊家たちを立たせた。結果、「第2の『NINA』(2005年初演のNoism初期の代表作『NINA―物質化する生け贄』)ができた」と、金森は初演時の手応えを口にしている。

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黒部シアター2023春より

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黒部シアター2023春より

再演は今年の夏で、演劇の聖地・利賀村で開催された「SCOT サマー・シーズン 2025」に参加。『セレネ、あるいはマレビトの歌』から『マレビトの歌』とタイトルをあらため、2年ぶりに上演を迎えている。自然に囲まれた黒部の野外劇場とは一転、利賀は合掌造りの日本家屋が舞台だ。客席は上限約200席で、文字通り観客に手が届きそうなほどの距離で踊る。金森をして「極めて難しい空間」と言わしめる舞台で、改めて演出に取り組んだ。

「SCOT サマー・シーズン 2025」での上演を成功裡に終え、彼らが次に向かったのがスロベニア。今年10月にスロベニアとイタリアで国境をまたいで開催された国際的フェスティバル「Visavì Gorizia Dance Festival(ヴィザヴィ・ゴリツィア・ダンス・フェスティバル)」から招聘を受け、フェス側のオファーで『マレビトの歌』を上演している。日本のダンスカンパニーが本フェスに招聘されるのは初めてのことで、2年越しに参加が決定。Noismにとっては2019年の劇的舞踊『カルメン』ロシア・モスクワ公演以来、6年ぶりの海外公演だ。スロベニアで初めて『マレビトの歌』は劇場での上演を迎え、劇場用に演出を改訂している。
スロベニアでの手応えを金森に聞いた。
「6年ぶりの海外公演はとても刺激的でしたね。目を潤ませながら感動を伝えてくれる高齢の女性。目を輝かせながら手を振ってくれる若者。人生で2度と出会わないかもしれない異文化の人々と、非言語である舞踊芸術による精神的交流を果たせたことは、とても有意義であり、これこそが舞踊の力であり、我々Noismが目指すべき活動の根幹なのだと、改めて実感しました」

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Visavì Gorizia Dance Festivalより ⒸGiovanni Chiarot

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Visavì Gorizia Dance Festivalより ⒸGiovanni Chiarot

スロベニアでのフェスを経て、今回の冬公演は新演出版での凱旋公演となる。キャストは金森を含めたNoism0+Noism1が出演。金森がその意気込みを語る。
「スロベニアで上演された本作品を、本拠地である新潟、そして埼玉で上演することにも意義を感じます。舞台上の出来事(作品)を、地球の裏側の人々も鑑賞したことに思い馳せる時、そこで生まれる感動は空間的な広がりを持ちます。それは人間とは何かという問いを、世界の人々と共有するという、舞踊芸術の持つ普遍的力を体験するということだからです。劇場でしかできない体験をしに、舞踊でしか伝えられないことを受け取りに、一人でも多くの方に劇場に足を運んで欲しいと思います」

黒部での野外劇場、利賀村の合掌造りの日本家屋、スロベニアとイタリアでの海外公演と、特異な道程を辿ってきた本作。開幕は12月5日、りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈劇場〉。初演から2年の時を経て、この冬、ついに『マレビトの歌』が国内の劇場で初の上演を迎える。

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SCOTサマー・シーズン2025より

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SCOTサマー・シーズン2025より

公演情報

Noism0+Noism1『マレビトの歌』
演出振付:金森穣
音楽:アルヴォ・ペルト
衣裳:堂本教子、山田志麻
出演:Noism0、Noism1
https://noism.jp/

新潟公演
2025年12月5日(金)19:00、12月6日(土)17:00、12月7日(日)15:00
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈劇場〉

埼玉公演
2025年12月20日(土)15:00、12月21日(日)15:00
彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉

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