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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2016.05.10]

ルグリ指導のブルノンヴィル2作品、谷桃子バレエの新作『オセロー』他、NHKバレエの饗宴

NHKバレエの饗宴 2016
マニュエル・ルグリ プロデュース「未来のエトワールたち」、スターダンサーズ・バレエ団『リラの園』、谷桃子バレエ団『オセロー』、橋本清香 木本全優『モーツァルト・ア・ドゥ』、小林紀子バレエ・シアター『レ・ランデヴー』、平田桃子 セザール・モラレス『くるみ割り人形』

2012年に始まった「NHKバレエの饗宴」も今年で5回目を迎えた。今回は第5回記念特別企画として、マニュエル・ルグリ プロデュース「未来のエトワールたち」から開幕した。これは、オーディションによって選ばれ、元パリ・オペラ座バレエのエトワールで、現ウイーン国立歌劇場バレエの芸術監督、マニュエル・ルグリの教えを受けた8人のダンサーによる舞台。ブルノンヴィル振付の『ゼンツァーノの花祭り』からと『ナポリ』からの2演目がルグリの指導により踊られた。

tokyo1605b_01.jpg 「ゼンツァーノの花祭り」から
撮影/瀬戸秀美(すべて)

『ゼンツァーノの花祭り』のパ・ド・ドゥは木村楓音と山本理久だったが、若さ溢れる踊りで、フレッシュな気が満ちた。特に木村は軽やかで身体がごく自然に音楽にのっている。『ナポリ』を踊った6人のダンサーも生き生きとしていて、気持ちよい。リハーサルも見せてもらったが、その頃はまだ、少し不安気だった。しかし、本番ではみな堂々と踊り切っていたので安心した。基本中の基本である舞台上での歩き方から、みっちりと指導していたルグリの教えを受けて、ブルノンヴィルのステップを舞台に表していた。

続いてスターダンサーズ・バレエ団が『リラの園』を踊った。これは昨年9月に上演されたオール・チューダー・プログラムの中でも踊られた。エルネスト・ショーソン作曲のヴァイオリンと管弦楽のための音楽『詩曲』とともに、結婚前夜のカップル(渡辺恭子と山本隆之)の感情が、愛人(吉瀬智弘)や過去の女(佐藤万里絵)の出現により交錯し、リラの花が咲き乱れ月光が静かに照らす庭園の中で揺れ動く。微妙な感情の変化がモダンな感覚で整えられた動きによって表現されている。

tokyo1605b_08.jpg スターダンサーズ・バレエ団「リラの園」 tokyo1605b_09.jpg スターダンサーズ・バレエ団「リラの園」

谷桃子バレエ団は新作『オセロー』は、日原永美子の演出・振付。ヴェニス公国の将軍オセローはバレエ団の芸術監督でもある斉藤拓、その妻デズデモーナは永橋あゆみ、オセローの騎手イアーゴーは三木雄馬、その妻エミリアは佐々木和葉、オセローの副官キャシオーは檜山和久。ほかに女性コロス男性コロスが5人ずつ出演するという本格的バレエ・ドラマだった。音楽はアルフレート・シュニトケのバレエ曲『オセロー』。
不倫の証拠となった白いハンケチを観客に示しながら、イアーゴーの陰謀を描く。黒い太い柱を何本か天から舞台の床に突き立て、赤い照明を空間に満たすように使って、陰鬱な登場人物たちの確執の心理を表した。悲劇の荘重な雰囲気は充分だが、次第に猜疑心を募らせていく、黒い権力者オセローの屈折したコンプレックスがもうひとつ浮かび上がってこなかった、と感じられたのだが・・・。

今年3月にウィーン国立歌劇場バレエの第1ソリストに昇格したばかりの橋本清香が、やはりソリストを務める木本全優と『モーツァルト・ア・ドゥ』(ティエリー・マランダン振付)を踊った。ウィーン国立歌劇場バレエはクラシック・バレエが中心だが、芸術監督のマニュエル・ルグリにより、特色のあるコンテンポラリー作品もレパートリーに採り入れている。『モーツァルト・ア・ドゥ』は、バレエ・ピアリッツの芸術監督のフランス人振付家、マランダンの振付作品。モーツァルトのピアノ協奏曲を使って、大胆な身体表現を見せる。熟練したダンサーの濃密な表現が印象的だった。

tokyo1605b_10.jpg 谷桃子バレエ団「オセロー」 tokyo1605b_11.jpg 谷桃子バレエ団「オセロー」
tokyo1605b_12.jpg ウィーン国立バレエ団 橋本、木本
「モーツァルト・ア・ドゥ」
tokyo1605b_13.jpg ウィーン国立バレエ団 橋本、木本
「モーツァルト・ア・ドゥ」
tokyo1605b_16.jpg バーミンガム・ロイヤル・バレエ団
平田、モラレス「くるみ割り人形」から

小林紀子バレエ・シアターは、フレデリック・アシュトンの『レ・ランデヴー』を踊った。プリンシパルガールは島添亮子、プリンシパルボーイはミラノ・スカラ座バレエのプリンシパル、アントニーノ・ステラ。
白い衣裳にピンクのリボンを可愛らしく結んだ女性ダンサーと、やはり白に薄いブルーのラインをあしらった衣裳の男性ダンサーが軽やかに踊る。音楽はフランスの作曲家ダニエル・オーベル。オントレ、パ・ド・カトル、パ・ド・トロワ、パ・ド・シスとソロ・ヴァリエーションをまじえながら展開していく。アシュトンらしい豊かな才能を感じさせるヴァラエティに富んだ動きがじつに楽しかった。

最後はバーミンガム・ロイヤル・バレエのプリンシパル同士のペア、平田桃子と南米のチリ出身のセザール・モラレスの『くるみ割り人形』のグラン・パ・ド・ドゥだった。レフ・イワノフの振付に基づいてピーター・ライトが振付けたヴァージョン。イワノフの流麗な流れとライトの細やかな配慮が行き届いた振付が素晴らしい。ガラ・コンサートをしめ括るのに相応しい華やかで豪華な踊りだった。
(2016年4月10日 NHKホール)

  tokyo1605b_14.jpg 小林紀子バレエ・シアター「レ・ランデヴー」tokyo1605b_15.jpg 小林紀子バレエ・シアター「レ・ランデヴー」
tokyo1605b_02.jpg 「ゼンツァーノの花祭り」からtokyo1605b_03.jpg 「ゼンツァーノの花祭り」から
tokyo1605b_04.jpg 「ナポリ」からtokyo1605b_05.jpg 「ナポリ」から
tokyo1605b_06.jpg 「ナポリ」からtokyo1605b_07.jpg 「ナポリ」から
撮影/瀬戸秀美(すべて)※クリックで拡大します

TV放映予定
◎2016.5.14(土)NHK Eテレ 15:00〜15:59
特集番組「夢をかなえるアン・ドゥ・トロワ〜ルグリと目指せバレエの饗宴〜」
◎2016.5.22(日)NHK Eテレ 21:00〜23:30
「クラシック音楽館」<NHK バレエの饗宴 2016>ノーカット

http://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=04967