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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2015.11.10]

妖精の伝説を巡って2組の恋の行方が展開、心が楽しくなる音楽劇、クーラウ作曲『妖精の丘』

インターナショナル・フリードリッヒ・クーラウ協会
戯曲『妖精の丘』
ルイーズ・ハイベア:作、フリードリヒ・クーラウ:作曲、杉本凌土:演出・脚色、伊藤範子:振付、谷桃子バレエ団:出演

フリードリッヒ・クーラウ作曲の戯曲『妖精の丘』(全5幕)が上演され、伊藤範子の振付で谷桃子バレエ団が出演する、と聞いて観に行った。クーラウはドイツに生まれ後にデンマークに帰化した作曲家。幼い頃に井戸に落ちて一方の視力を失った。「ピアノのためのソチネ」によりピアノ学習者にはよく知られている。また、クーラウはフルートを使った曲を多く作曲し、作風も似ているところから「フルートのベートーヴェン」とも呼ばれたという。
『妖精の丘』は、デンマーク王フレデリック4世の皇女の結婚のために上演された祝祭劇で、ハイベアの戯曲にクーラウが作曲したもの。デンマークの秘曲ともいわれ、本格的な国外上演は初めてだという。オーケストラと合唱と今回は朗読、そしてバレエという各ジャンルが複合して参加する音楽劇である。

tokyo1511g_1066.jpg 妖精の踊り
撮影/浦野俊之(すべて)

物語は、妖精の丘の神秘的な言い伝えを巡って、二組のカップルの恋の行き詰まりを国王の勇気と叡智が見事解決する、というもの。19世紀に書かれた戯曲だらから、王の威光を賛美しているが、その成り行きはじつに良く考えられていて、シェイクスピアの物語を彷彿させるところもあった。
クーラウの音楽は、ベートーヴェン風と言われるだけあって荘重で美しい。重厚な響きと舞曲風の軽やかさ、美しいメロディーが織り成されて聴き応え充分。合唱と民族曲風の楽しい歌も歌われる。音楽的に素晴らしい構成に感じられた。
バレエのシーンは、第2幕からで、村人たちの踊り、妖精たちの踊り、妖精の王、貴族の踊り、結婚式のお祝いの踊りなど、バロックダンスも採り入れられて音楽劇としては比較的多く踊られ、華やかに舞台を盛り上げた。妖精の王役の酒井大は短いバレエシーンの中でしっかりと表現した。こうした狭い混合舞台で踊るのは難しいと思われるが、振付は終始安定した形を創っていて、北欧の作品だが、舞踊表現は妙に神秘的にならず、明るく人間的なおもしろさが楽しく現れていた。

2組のカップルの恋の成り行きを追って展開する物語なので、特に女性は老いも若きも我が身になぞらえているのだろうか、しばしときめいている様子が会場からはうかがわれ、それを傍受しているだけでも若やいだ気分となり、たいへんな得をした思いだった。
(2015年10月11日 第一生命ホール)

tokyo1511g_918.jpg 村人の踊り tokyo1511g_1096.jpg 妖精の王
tokyo1511g_1183.jpg 妖精たちの踊り tokyo1511g_1558.jpg パドユイット
tokyo1511g_1632.jpg パドユイット tokyo1511g_981.jpg 村人の踊り
tokyo1511g_1458.jpg メヌエット tokyo1511g_1605.jpg パドユイット
撮影/浦野俊之(すべて)