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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2015.08.10]

今年も若いエネルギーに溢れる夏のバレエの祭典が華やかに踊られた!!

「バレエアステラス☆2015〜海外で活躍する日本人バレエダンサーを迎えて〜」
新国立劇場バレエ研修所

「バレエアステラス☆2015〜海外で活躍する日本人バレエダンサーを迎えて〜」の第6回目が開催された。これは文化庁の「次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」として行われている。今回も昨年と同様に、海外で活躍する日本人バレエダンサーを迎え、新国立劇場バレエ研修所研修生と国内のバレエ団のダンサーの競演である。デヴィッド・ガルフォース指揮による東京フィルハーモニー交響楽団の演奏により、牧阿佐美がグノーの曲に振付けた『シンフォニエッタ』で開幕。ダンサーは新国立劇場バレエ研修所、第11・12期研修生11名。美しく整った身体でシンフォニックな動きを堂々と踊った。

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フォガティ みこ、ノア・ロング「グラン・パ・クラシック」撮影/瀬戸秀美

まずは国内組の貞松・浜田バレエ団の上山榛名と塚本士朗が『ラ・シルフィード』のパ・ド・ドゥを踊った。ブルノンヴィル振付、レーヴェンショルド音楽である。上山のシルフィードの愛らしさ、塚本のジェイムスの歯切れのいい動きが際立ち、ブルノンヴィルのステップの楽しさを味わうことができた。
続いてフォガティみこ(インディアナ・バレエ・コンサヴァトリー)とノア・ロング(元カナダ国立バレエ団)の『グラン・パ・クラシック』(グゾフスキー振付、オーベール音楽)。フォガティみこは、あの映画『ファースト・ポジション』に出演して人気者となって、主要な国際バレエコンクールのほとんどすべてで入賞を果たした。今年の秋のシーズンからバーミンガム・ロイヤル・バレエ団に入団する予定。さすがに大舞台に馴れているというか、落ち着いた踊りでしっかり自分をアピールしながら魅せた。ダークブルーの衣装も舞台姿を惹き立てて見え、堂々とした踊りだった。
ブカレスト国立劇場バレエ団のファーストソリスト奥野凜は同僚でプリンシパルのロベルト・エナケと『白鳥の湖』の第2幕アダージオ。エナケはアリーナ・コジョカル・ドリーム・プロジェクトなどでも来日している。落ち着いた踊りで息の合ったパートナーシップをみせた。奥野はこの夏に他でも見る機会があったが、なかなか魅力的なダンサーだ。
バイエルン国立歌劇場ミュンヘン・バレエの河野舞衣は、同僚のジェイムズ・リトルとノイマイヤーの『幻想〜白鳥の湖のように〜』クレアとアレクサンダーのパ・ド・ドゥ(ノイマイヤー振付、チャイコフスキー音楽)を踊った。清潔感のある格調の高さを感じさせる踊りだった。

tokyo1508c_04.jpg 「白鳥の湖」 tokyo1508c_05.jpg 「幻想〜白鳥の湖のように〜」 tokyo1508c_06.jpg 「幻想〜白鳥の湖のように〜」
tokyo1508c_03.jpg 奥野凛、ロベルト・エナケ「白鳥の湖」 tokyo1508c_07.jpg 河野舞、ジェイムズ・リトル「幻想〜白鳥の湖のように〜」

新国立劇場研修所第10期研修生で、今年卒業して新国立劇場バレエに入団したばかりの木村優里は、同僚のソリスト井澤駿と『ドン・キホーテ』第3幕グラン・パ・ド・ドゥ(プティパ/ゴルスキー振付、ミンクス音楽)を踊り、大いに受けた。井澤の安定したテクニックと木村の伸びやかな踊りが際立ったのだ。木村は身長もあり、なかなか舞台映えがする。それと物怖じしないというか、舞台に立つことに恐れを感じていないのか、舞台上で自分を表現することに集中することが、あまり苦もなく出来るようにも見える。期待の新人なのでおおらかなダンサーに育って欲しい。
スターダンサーズ・バレエ団の 林ゆりえは、ドネイツクやライプチヒなど主にヨーロッパのカンパニーで踊り、今シーズンより新国立劇場バレエに入団した木下嘉人と『シンデレラ』(プロコフィエフ音楽)のグラン・パ・ド・ドゥを踊った。オープニングの『シンフォニエッタ』を除いて、唯一の日本人振付家、鈴木稔の振付を堂々と踊った。

tokyo1508c_08.jpg 木村優里、井澤駿「ドン・キホーテ」 tokyo1508c_09.jpg 木村優里、井澤駿「ドン・キホーテ」

ロシア国立バレエ・モスクワのプリンシパル、多久田さやかはボリショイ・バレエ学校時代に同じクラスだったという牧阿佐美バレヱ団の清瀧千晴とワイノーネン振付『パリの炎』パ・ド・ドゥ(アサフィエフ音楽)。清瀧はモスクワで学んでいたころのことを思い出したのか、力強い動きをみせ、多久田とともにロシア・バレエらしい力感の感じられる舞台だった。
ワガノワ・バレエ・アカデミー出身でブカレスト国立劇場バレエのプリンシパル、日高世菜と、ファーストソリストの吉田周平は『海賊』奴隷のパ・ド・ドゥ(プティパ振付、音楽はオルデンブルク男爵)を踊った。グルナーラが奴隷商人ランディゲムにより大金持ちのパシャに披露される踊りだ。吉田は口髭を蓄えて踊りの中に、ずるく計算高そうな芝居をみせた。日高はそれを無視し気位の高さを表した。
そして谷桃子バレエ団からは、斎藤耀と三木雄馬がやはり『海賊』のグラン ・パ・ド・ドゥ(原振付プティパ、振付アリエフ、音楽ドリゴ)を踊った。これは谷桃子バレエ団のレパートリーとなっているアリエフ版なので、コンラッドとメドゥーラの踊りだ。三木雄馬が昨年、『リゼット』で主役デビューを果たし、可憐に踊る斎藤をしっかりとサポート、余裕綽々の演技だった。

tokyo1508c_10.jpg 菅野茉里奈、ウェイ・ワン「アルルの女」

「バレエアステラス☆2015」のトリを飾ったのは、ワガノワ・バレエ・アカデミー出身の菅野菜里奈と、北京舞踊学校卒業のウェイ・ワンのベルリン国立バレエ団のペアだった。当初はベルリンの新しい芸術監督のナチョ・ドゥアト作品を踊る予定だったそうだが、パートナーとの関係などもあり、ローラン・プティの『アルルの女』(音楽ビゼー)に決まったそうだ。しかしこれが良かった。ウェイ・ワンが、自分でもよくわからないうちに、まったく知らない世界と対峙しなければならなくなった男を、強烈なエネルギーを発散しつつ踊った。菅野もどうにも理解しがたい男の神秘に立ち尽くすしかない女の気持ちを鮮明に表わして踊った。

日本のカンパニーのダンサーたちと海外を拠点とする日本人ダンサーの競演ということもおもしろい試みではある。しかし、あまりそうしたことにはこだわらず、普段は観る機会がない、海外で踊るダンサーを中心としたガラ・コンサートとしての雰囲気を盛り上げたほうがよりアピールするのではないか、などとも感じた。来年も大いに期待したい公演である。
(2015年7月19日 新国立劇場 オペラパレス)

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菅野茉里奈、ウェイ・ワン「アルルの女」
撮影/瀬戸秀美(すべて)