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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2015.04.10]

ピーター・ライトの細やかな演出を踊り、西原友衣菜がジゼルのデビューを飾った

スターダンサーズ・バレエ団
『ジゼル』マリウス・プティパ:振付(ジャン・コラリ、ジュール・ペローの原振付に基づく)、ピーター・ライト:追加振付・演出

スターダンサーズ・バレエ団の『ジゼル』はピーター・ライト追加振付・演出、ピーター・ファーマー美術の落着いたヴァージョンである。特にピーター・ライトの演出はじつにきめが細かく、些細な感情の流れもないがしろにしない。マイムをきちんと音楽とともに使って、登場人物の感情の流れを分かり易く浮き彫りにする。

tokyo1504f_016.jpg 西原友衣菜、浅田良和
(c)Takeshi Shioya〈A.ICo.,Ltd.〉

たとえばバチルダ姫がジゼルにネックレスを与えるところでも、従来の舞台だと、同じように結婚を間近に控えているからという理由だけで差し出す、という演出が多い。しかしライトの演出では、お供の者から「この娘は踊りが大好きでとても上手いのだが、身体が弱くて思うように踊らせてもらえないのです」と解説させ、観客と共に十分にシンパシイを感じたうえでネックレスをプレゼントしたくなる感情をバチルダ姫に味わせてみせる、という念の入れよう。
また、要所で良く知られたプティパらの振付を崩さずに活かして使い、なるほど原振付はこう表現されていたのか、と観客に感得させる。クレジットも改訂ではなく、謙虚に追加振付としているあたりに、先達への深い畏敬を感じさせる。サーの称号を授けられているだけあって、舞台芸術の世界でも紳士として振る舞っていることが分る。

キャストはジゼルがスターダンサーズ・バレエ・スクール出身の西原友衣菜。この日の舞台で、晴れてジゼルのデビューを飾った。少し小柄だが、つぶらな瞳が印象的でしっかりと全幕を踊った。もちろん、登場人物が込める感情にはまだまだ磨かなければならないものはあると思われる。しかし、独特の軽ろやかさもあって柔軟性も感じさせる。ナタリア・マカロワも森下洋子も小柄だけれど、舞台の上ではより大きく見える。彼女たちが舞台の上に描く踊りのラインが大きいから、そう感じられるのだろう。そうした先輩の表現の仕方を学ぶのもひとつの方法かも知れない。
アルブレヒトは浅田良和。東京新聞全国舞踊コンクールやユース・アメリカ・グランプリなどでの素晴らしい受賞歴がある。K バレエ カンパニーでも『白鳥の湖』や『ロミオとジュリエット』で踊っていたからご存知の方も多いだろう。第2幕のクライマックスでは、とても熱の籠もった踊りをみせた。ラストのジゼルが残した花びらを見つけて、ふと我に返り、一縷の救いを感じてもいいのだろうか、という想いを浮かべるあたりの演技が印象に残った。
(2015年3月1日 文京シビックホール 大ホール)

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