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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2014.05.12]

牧阿佐美バレヱ団のトップダンサーが新たな活動拠点でお披露目の公演

牧阿佐美バレヱ団「プリンシパル・ガラ」
『エスメラルダ・パ・ド・ドゥ』ベン・スティーヴンソンOBE:振付、『ワルプルギスの夜』レオニード・ラヴロフスキー:振付、ほか

牧阿佐美バレヱ団のトップダンサーや期待の若手が顔をそろえ、人気のパ・ド・ドゥや名作の名場面を踊る〈プリンシパル・ガラ〉が文京シビックホールで開催された。同団としては珍しい公演の形だったが、これは、公益財団法人橘秋子記念財団が、今年1月、東京都文京区と公益財団法人文京アカデミーと事業協定を結んだのを記念して行われたもの。文京シビックホールは、既に東京フィルや鼓童と事業協定を結んでいるが、新たにバレエ団の参加を得たことで、より多彩な活動が行えることになる。一方、これまで活動の拠点となる劇場を持たなかった牧阿佐美バレヱ団にとっては、新たな拠点を得たことになるわけで、この事業協定が今後どのように展開されるか、期待される。

tokyo1405b01.jpg 『エスメラルド・パ・ド・ドゥ』撮影/鹿摩隆司

幕開けは、ショパンのピアノ協奏曲第2番によるネオ・クラシックな『コンスタンチア』(ウィリアム・ダラー振付)。ショパンが想いを寄せた音楽学校の同窓生コンスタンチアと、ショパンを母親のような愛情で包んだジョルジュ・サンドという、対照的な女性とショパンとの関わりを描いた作品。青山季可が演じたコンスタンチアは清々しく爽やで、ショパンの京當侑一籠は寄り添うように彼女とデュエットを踊った。サンド役の吉岡まな美は陰りを漂わせ、やや暗い印象。ショパンの心の内に分け入るでもなく、三人の関係にドラマテックに迫るでもなく、さらっとした淡彩画の趣だった。

休憩後に5作品が続けて上演された。『パリの炎』パ・ド・ドゥ(ワシリー・ワイノーネン振付)を踊ったのは、米澤真弓と清瀧千晴のペア。高度なテクニックが求められる演目だが、米澤の安定した回転技や清瀧の力強いジャンプなど、若いエネルギーが存分に発散された。『ジゼル』第2幕のグラン・パ・ド・ドゥ(三谷恭三振付)で、日髙有梨は軽やかな跳躍で精霊となったジゼルを伝えていた。アルブレヒトはモンゴル国立バレエ団のラグワスレン・オトゴンニャムだったが、細部のコントロールが今一つ決まらない。また、二人の演じるジゼルとアルブレヒトの思いがしっくり噛み合っていないようにも感じられた。

このあと、バレエ団として初演になる演目が二つ続いた。まず、『エスメラルダ・パ・ド・ドゥ』(ベン・スティーヴンソンOBE振付)。踊ったのは、やや小柄な織山万梨子と長身の中家正博。織山はタンバリンを打ち鳴らしながら一つ一つの振りを的確にこなし、艶やかな雰囲気を漂わせた。中家も堅実な演技で、マネージュでは脚のラインも美しく、ダイナミックな跳躍を見せた。
もう一つの初演作品は、グノーのオペラ『ファウスト』の中のバレエ・シーン『ワルプルギスの夜』(レオニード・ラヴロフスキー振付)。今回は巫女とバッカス(酒神)、パン(牧神)をメインにした抜粋版だった。バッカスの塚田渉が何とも逞しく、巫女の中川郁を相手にアクロバティックなリフトを鮮やかにこなした。中川はしなやかな脚さばきで華のある演技を見せ、パンを踊った清瀧千晴もパワフルなピルエットやマネージュで盛り上げた。音楽に拮抗した、躍動感あふれるステージだった。ほかに三人のニンフも登場したが、酒宴としては寂しく、いつか、きちんとした形で上演して欲しいという思いが残った。最後を締めたのは『ドン・キホーテ』第3幕抜粋(アザーリ・プリセツキー、ワレンティーナ・サーヴィナ振付)。キトリは青山季可、バジルは菊地研というトップ同士の組み合わせだけに、超絶技巧も余裕をもって踊りこなし、華やかにフィナーレを飾った。
(2014年4月21日 文京シビックホール)

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tokyo1405b02.jpg 「ワルプルギスの夜」撮影/鹿摩隆司(すべて)