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ABTの隅谷健人と渡辺与布、ワシントン・バレエの木村綾乃と飯田慧、マラーホフと針山愛美も登場した「日本国際バレエフェスティバル・ガラコンサート2025」

ワールドレポート/東京

針山 真実 Text by MAMI HARIYAMA

「日本国際バレエフェスティバル・ガラコンサート2025」

「世界で活躍するダンサーと、未来を担う若き才能の共演」として川崎市のカルッツかわさきで日本国際バレエフェスティバル主催のガラコンサートが行われた。
日本国際バレエフェスティバルはまず8月11日から16日まで、ジョン・クランコ・スクールなど名のあるバレエ学校から教師を招き6日間のワークショップを開催、続いて8月17日から21日まで多数のジャンルの踊りでエントリーが出来るコンクールを開催。総勢300名を超える若いダンサーたちが川崎に集まった。その最終日に世界的に活躍するダンサーたちによる舞台芸術を、次代を担う若い世代に届けたいという同団体の想いから、日本国際バレエフェスティバル特別公演「ガラコンサート 2025」が開催された。

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未来のスターダンサー
永井咲良
撮影:Mariko Matsubayashi

公演の1部はコンクール審査員らが選んだ「未来のスターダンサーたち」が出演し、コンクールで披露したクラシック・バレエのヴァリエーションやコンテンポラリーの演技を披露した。
審査員らから選ばれただけあって、みんな有能で将来性のあるダンサーたちだった。特に会場を沸かせたのは高校1年生の永井咲良によるタンバリンを持った『エスメラルダ』のヴァリエーション。堂々としたパフォーマンスに加えて稀に見る安定性でテクニックにぶれがなく高度な技術で会場を沸かせた。永井はこのガラコンサートの直後すぐ観客が直接投票して決定する特別な賞、「オーディエンス賞」も受賞した。そして昨年のオーディエンス賞を受賞した河合摩乃が踊った『ラ・バヤデール』よりガムザッティのヴァリエーションも、中学1年生とは思えない表現力、そして美しい足先、美しく正確なポディションが目を惹いた。
公演終演後に興奮したコンクールの出場者たちに写真撮影を求められていたのはパク・ユンジェ。今年16歳で「ローザンヌ国際バレエコンクール2025」で韓国人男性ダンサーとして初めて優勝した実力派バレエダンサー。パク・ユンジェはローザンヌ国際バレエコンクールでも披露した『パリの炎』のヴァリエーションを踊り、高さと伸びのある迫力ある跳躍、美しい回転、回転の後にバランスが取れる余裕も見せ、16歳とは思えない圧巻のパフォーマンスで皆を驚かせた。

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河合摩乃
撮影:Mariko Matsubayashi

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パク・ユンジェ
撮影:Mariko Matsubayashi

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ワシントン・バレエ
木村綾乃、飯田慧
撮影:Mariko Matsubayashi

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アメリカン・バレエ・シアター
隅谷健人、渡辺与布
撮影:Mariko Matsubayashi

2部はプロダンサーたちのパフォーマンス。アメリカン・バレエ・シアターで踊る隅谷健人と元新国立バレエ団で現在アメリカン・バレエ・シアターに移籍した渡辺与布の2人のペアは、ウヴェ・ショルツ振付の『Sonata』を披露した。しっとりとした大人の雰囲気によるこの美しさは、やはり経験を積んだベテランだからこそ魅せられるもの。1部の若手ダンサーとの違いがはっきりと分かり、2人の洗練されたしなやかな動きに魅了された。またワシントン・バレエの木村綾乃と飯田慧の2人は、ロシアの振付家アサフ・メッセレルの『春の水』を踊った。ラフマニノフの楽曲に合わせて、2人がダイナミックに飛び出して来ると、舞台が一気に明るく清々しくなり、木村の爽やかな笑顔は見ているこちらも良い気持ちにさせる。スピード感があり勢いのある2人に、飯田のパートナリングも素晴らしく、このペアもさすがプロダンサーだった。
公演の終盤にウラジーミル・マラーホフ(元ベルリン国立バレエ団芸術監督)と針山愛美(元ベルリン国立バレエ団)の二人が『白鳥の湖』第2幕よりグランアダージオを披露。長きにわたってバレエ界を率いるレジェンドバレエダンサー、ウラジーミル・マラーホフは歩いて出てくるだけで会場の空気を一気に変えた。貴重なマラーホフの登場に審査員も食い入るように舞台に惹き込まれ、レジェンドの表現力と舞台上の美しい姿に会場全体が静けさに包まれた。
そして公演のクライマックスは、コンクールに出演したダンサーたちの中から希望者全員が出場した「グランドフィナーレ」。小さなバレエダンサーたちからプロのダンサー、そして最後はマラーホフも登場してフィナーレを迎えると大きな拍手が湧き、会場は大きな盛り上がりと共に公演は終演した。将来が楽しみな未来のスターダンサーたちと、今、現役で活躍するダンサーたちの共演は見ごたえのあるパフォーマンスだった。
(2025年8月21日 カルッツかわさき)

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ウラジーミル・マラーホフ、針山愛美
撮影:Mariko Matsubayashi

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イェーツ陽鞠ローズ
撮影:Mariko Matsubayashi

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シェリー・チェン
撮影:Mariko Matsubayashi

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近藤ひなの
撮影:Mariko Matsubayashi

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吉元マリア、グジェレフ瞭舞
撮影:Mariko Matsubayashi

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青柳英美里
撮影:Mariko Matsubayashi

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撮影:Mariko Matsubayashi

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