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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2013.11.11]

どこまでも優しく真摯なアルブレヒトを演じたホールバーグ、東京バレエ団『ジゼル』

東京バレエ団
『ジゼル』レオニード・ラヴロフスキー振付

東京バレエ団が繰り返し上演しているロマンティック・バレエの名作『ジゼル』(ラヴロフスキー版)。今回の話題は、アメリカン・バレエ・シアター(ABT)とボリショイ・バレエという米露の名門バレエ団でプリンシパルとして活躍するデヴィッド・ホールバーグをアルブレヒト役に招いたこと。ホールバーグはアメリカでバレエを学び、パリ・オペラ座バレエ学校で磨きをかけ、2001年にABTに入団し、2005年プリンシパルに昇格した。2011年には、アメリカ人として初めてボリショイ・バレエにプリンシパルとして入団して注目を浴びた。ダンスール・ノーブルとして評価を得てきているだけに、今回の舞台も期待された。ジゼルはダブルキャストで、東京バレエ団の看板スター、上野水香と吉岡美佳が務めた。上野が踊った初日を観た。

ホールバーグはすらりと伸びた脚が美しく、お忍びで来たとはいえ、高雅な身分は隠せそうもない。純真なジゼルがいとおしくてたまらないというふうに、包み込むように優しく接し、ジゼルのステップに合わせる姿が爽やかだった。身分がバレてしまった後でも、バチルド姫の手前、バツが悪そうに取り繕うのではなく、ジゼルを無視しきれず、気がかりでたまらないという風に彼女のほうを見やりもした。ジゼルが正気を失うのを目の当たりにして茫然としていたが、彼女が息絶えると激しく抱き締め、後悔の念を露わにした。
第2幕では、マント姿の憂いを帯びた表情や、ひざまずいて頭を下げる姿から、いかに自責の念にとらわれているかを滲ませ、ジゼルの霊の気配を感じ取ると、懸命に追いすがった。ウィリたちに捕らえられて必死で踊るのは、自分の命が助かりたいからというよりも、踊り続けることでジゼルへの愛を全うしようとするように感じられた。夜明けの鐘が鳴ると、ジゼルは墓の中に消えるが、いとおしそうにその墓に触れるホールバーグの仕草には万感の思いがこめられていた。どこまでも優しく真摯なアルブレヒトだった。

上野はホールバーグと既に共演しているだけに、演技のやりとりは自然に映った。可憐な村娘の役とはいえ、少し落ち着きを増したように思えたが、以前は硬かったホッピングは軽さを増したようだ。つま先立ちの甲も美しく、しなやかに身体を反らし、軽快に舞い、喜びや驚愕、絶望などを伝える演技も丁寧だった。第2幕では、ホールバーグと魂を響き合わせるようなデュエットを展開したが、ウィリとしての空気のような透明感がさらに備わればと思う。森番ヒラリオンの柄本弾はジゼルへの一途な思いを良く伝えていたが、難をいえば、ホールバーグや上野を相手にするには少々若すぎたことだろうか。東京バレエ団の群舞には定評があるが、特に第2幕の白い衣裳で踊るウィリたちの群舞は、きれいにラインがそろい、アラベスクの姿勢も美しく、見事に統制がとれていて幻想的だった。
(2013年10月12日、東京文化会館)

tokyo1311b_0596.jpg 上野水香、デヴィッド・ホールバーグ
photo:Kiyonori Hasegawa
tokyo1311b_0639.jpg デヴィッド・ホールバーグ
photo:Kiyonori Hasegawa