ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2013.02.12]

フィリピエワとマトヴィエンコの息の合ったパートナーシップ、キエフ・バレエ

ウクライナ国立キエフ・バレエ
『白鳥の湖』プティパ、イワノフ、ロプホフ:原振付、ワレリー・コフトゥン:振付・演出、『眠りの森の美女』プティパ:原振付、ヴィクトル・リトヴィノフ:振付・演出

タラス・シェフチェンコ記念ウクライナ国立キエフ・バレエ団が来日し、『くるみ割り人形』『ジゼル』『眠りの森の美女』『白鳥の湖』ほかを上演した。キエフ・バレエは昨年11月に、キエフ出身でマリンスキー・バレエ団やボリショイ・バレエ団でも踊ったスター・ダンサーのデニス・マトヴィエンコが新たに芸術監督に就任した。マトヴィエンコは新国立劇場バレエ団にもスベトラーナ・ザハロワとともに、しばしばゲスト出演したいたので日本でもお馴染みのダンサー。33歳という若さで芸術監督に就任したので、バレエ団の将来も大いに嘱望されている。

tokyo1302c_03.jpg 撮影/瀬戸秀美

『眠りの森の美女』はかつてこのカンパニーで20年以上に渡ってプリンシパルとして踊り、芸術監督も務めたワレリー・コフトゥンが演出・振付けたもの。オーソドックスなヴァージョンだった。
オーロラ姫は若手のホープ、オリガ・ゴリッツァ。彼女はキエフ・バレエ学校出身でセルジュ・リファール・コンクールで1位、サンクトペテルブルクで行われたワガノワ賞のコンクールでは3位に入賞している。プロポーションは見事で、踊りも勢いがあり、見ていてすがすがしい。動きは爽快でスポーディだが、ディテールは少々端折っているところがあるようだった。デジレはマトヴィエンコが踊ったが、さすがに彼は細部への配慮のある踊りだった。芸術監督だけあって、舞台全体を盛り上げる踊りだった。見せ場もしっかり心得ているから、とっておきの技を盛りこんで観客を喜ばせる。彼が登場する第2幕から、会場の雰囲気も変わり、観客の期待がふくらんでくるのが感じられた。ながらくキエフ・バレエの第一線でプリンシパルとして踊り続けてきたエレーナ・フィリピエワが、青い鳥のフロリナ王女を踊ったが相変わらずの人気だった。
キエフのバレエは、独特の雰囲気がある。ロシアでは南に位置し、地政的には東欧やトルコ、イスラム圏にも近く、彼ら文化にも影響を受けているのであろうか、セットの細部の装飾にもそうした感じを受けることがある。それらがエキゾティックで開放的な雰囲気を醸しているのであろう。
(2013年1月11日 東京文化会館)

tokyo1302c_01.jpg 撮影/瀬戸秀美

『白鳥の湖』はエレーナ・フィリピエワのオデット/オディールとデニス・マトヴィエンコのジークフリートだった。フィリピエワはボリショイ・バレエの大スター、マイヤ・プリセツカヤにみとめられ薫陶を受けている。だからだろうか、ポール・ド・ブラがじつに美しく、プリセツカヤが有名な『瀕死の白鳥』で見せた忘れ難い舞台を彷彿した。もちろん、そればかりではなく全身がバランスよく脱力しているので、踊りのすべてが滑らかで正確だ。
そのしなやかで芳醇な美しさが、マトヴィエンコのエネルギッシュな勢いの良さとじつに素敵にマッチしていて、素晴らしいカップルだった。キャリアのあるフィリピエワが年長の余裕と優しさで包み込むような雰囲気を出して、マトヴィエンコを自由に踊らせている。彼の精神的安定感にも寄与している、とも言えるかもしれない。
特に今回来日したキエフ・バレエ団のダンサーは長身揃いで、キャラクター・ダンスもスペインの踊りやチャールダッシュ、マズルカなどは見応え充分った。第2幕ではロットバルトも道化も長身だったので、フィリピエワの黒鳥の優れた表現力とともに迫力満点の舞台が繰り広げられた。かつてのボリショイ劇場の舞台で繰り広げられた豪快なダンスを観たような爽快感が心地良かった。キエフ・バレエの花嫁候補はいつも四人だが、衣装が夏向きというか大胆に短いチュチュだったのには驚いた。長身の四人の花嫁候補はそれぞれ魅力的で、揃ってジークフリートのお眼鏡の庇わず失格してしまうのはいささかもったいない気がしないでもなかった。
(2013年1月13日 国際フォーラム ホールA)

tokyo1302c_05.jpg 撮影/瀬戸秀美 tokyo1302c_06.jpg 撮影/瀬戸秀美 tokyo1302c_07.jpg 撮影/瀬戸秀美
tokyo1302c_10.jpg 撮影/瀬戸秀美 tokyo1302c_08.jpg 撮影/瀬戸秀美 tokyo1302c_09.jpg 撮影/瀬戸秀美
tokyo1302c_04.jpg 撮影/瀬戸秀美 tokyo1302c_02.jpg 撮影/瀬戸秀美