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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2013.01.10]

バルトークの音楽を重層的に捉え視覚化した金森穣による音楽劇

Noism1×Noism2
『中国の不思議な役人』金森穣:演出・振付

Nism1×Noism2のバルトーク音楽による『中国の不思議な役人』は、小沢征爾が総監督を務めるサイトウキネン・フェスティバル松本2011のメインプログラム「バルトーク・ダブルビル」のために、『青ひげ公の城』と共に制作上演されたもの。今回は「NHKバレエの饗宴2012」招待作品『solo for 2』と共に、外部プロジェクトの2作品を上演することになった。Dance CUbeでは『solo for 2』は既に「NHKバレエの饗宴」で紹介しているので、『中国の不思議な役人』を紹介する。
首都圏では久しぶりのNoism単独公演である。『中国の不思議な役人』は、周知のように2011年のサイトウキネン・フェスティバルで製作された後、既にイタリアなどで再演されている。

tokyo1301f_01.jpg 撮影/篠山紀信

舞台いっぱいに頭から黒い衣装に身を包んだ黒子風の一団が立ち並び、頭上にはアンティークな雰囲気のシャンデリアとも呼べない傘付きのライトが数個照らされている。悪党三人と娼婦の黒衣がバリバリと剥がされて、ドラマは始まる。
真っ赤なテーブルの上で娼婦のミミ(井関佐和子)は客の気を引いて翻弄し、悪党たちはその金を奪う。しかし客として中国の役人が登場すると、彼は黒子に操られているのだが、そううまくはいかない。不思議な存在感によって、殺そうとしても蘇り、女を襲う…。不気味でグロテスクな存在が次第に露わとなる。
頭から黒い衣装を着けた集団を、背景にランダムに立たせたのは、オーケストラとの共演を意識した演出だろう。黒子という顔の見えない不気味な存在が中国の役人の実存と共鳴している。その集団はソリストたちとあまり絡むことはなく、ダンス的には大きな意味を付与することはできなかったかもしれない。しかし、舞台全体が得体のしれないものに囲まれている、という不気味さを表すには効果的だった。中央で踊るソリストたちの演技を不気味な暗黒の光りで浮かびあがらせた。ミミ役を踊った井関佐和子のダンスが、一際素晴らしかった。この作品は彼女自身の身体が持つ、輝くような健康的な美しさとは些か異なった表現ではあったが、熱演して補って余りあるものがあった。金森の演出・振付は、楽譜に即して描いているので音楽との関係上、自由にシーケンスを構成することがかなわなかったが、様々に工夫を凝らして物語を語った。
そしてなにより、個々のバルトークの音を正確に読みとって踊っているだけに、じつに重層した立体的な舞踊劇ができあがったことは素晴らしい。「一流の生演奏、という経験を経たからには、それ以前のNoismには戻れない」と金森は語っている。さらに音楽との深い関係を構築した作品を期待している。
(2012年12月25日 横浜KAAT)

tokyo1301f_02.jpg 撮影/篠山紀信 tokyo1301f_03.jpg 撮影/篠山紀信
tokyo1301f_04.jpg 撮影/篠山紀信 tokyo1301f_05.jpg 撮影/篠山紀信