ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2012.10.10]
♪バレエ昔も今も♪BALLET OLD AND NEW♪
アラン・プラテルの『OUT OF CONTEXT - FOR PINA』がダンス・トリエンナーレ・トーキョーで上演された。彼が敬愛する亡きピナ・バウシュに捧げた作品だ。プラテルは過去3回来日しているが、私が最も衝撃を受けた舞台は、1995年のモントリオールのヌーヴェルダンス・フェスティバルで観た『ボンジュール・マダム』である。これは、ホームレス集団の少年殺人をリアルにダンスで描いたショッキングな作品だった。年齢も身体性もふぞろいなホームレスたちの一群が、”シュ、シュ”という生理的な呼吸音を吐き出しながら踊るダンスは、いまでも深く印象に残っている。当時はまだ、今回の作品のようにコントロール出来ない運動障害の動きを、ダンスに採り入れてはいなかった。しかしそこには、ピカレスクが悪党を描いて魅力を放つように、ネガティヴな登場人物の固有の動きにこそ可能性を求めているの視点が感じられた。そして今回の作品では、コントロールできない動きが何に由来するのか、意識を超えた世界にまで表現が進化していると思われる。

可愛いオブジェとダンサーのコラボレーションが作ったワンダーランド

珍しいキノコ舞踊団
『3mmくらいズレてる部屋』 伊藤千枝 構成・振付・演出

珍しいキノコ舞踊団の『3mmぐらいズレてる部屋』は、2006年にAustrallia-Japan dace Exchange 2006から委嘱を受けて創られた。2006~07年にかけてオーストラリアと日本の各都市をツアーして鎌倉では上演されたのだが、首都圏では今回が初登場となる。

奇妙な形の椅子やテーブルなど日常生活で使われているものが、ちょっとずつデフォルメされ、不思議な感覚が支配している部屋。入り口はボトルで出来ていたり、テーブルの一カ所の足が短かったり、椅子の足が短くて背もたれが極端に長かったり、巨大は電話の受話器や「&」マークなど超現実的な生活品がランダムにおかれている。どれにも実用性はないけど可愛いらしさや楽しさを感じさせるオブジェだ。そのオブジェを様々に組み合わせながら踊るうちに、みんなで団欒する奇妙だがなんかおもしろいメインテーブルが出来上がる。ダンスも珍妙な動きを組み合わせたソロやデュエット、ショーダンスのパロディ、などが次々と良く知られたポピュラーな曲とともに次々と踊られる。
ダンスの雰囲気とも良く合って楽しかったのは、かわいい豆電球がふたつ付いたスタンド。魅惑的な夜の物語の世界への誘いが、オブジェ自体のイメージから醸し出されて素敵なダンスだった。伊藤千枝のペアの足人形はシュールでおもしろかったし、スパイダーヘアーもなかなか奇想天外だった。いくつか組み合わせたハンガーに豆電球を付けたミニシャンデリアもじつに可愛いかった、これは意外とファンタスティックで傑作だ。モップの柄にライトを付けたオブジェはおもしろいアイディアだったが、ダンスにするともうひとつ成功とは言えなかった。実際に使用する動作がかえって邪魔になってダンスが生きなかったのかもしれない。
様々な珍しい小道具たちとダンサーの個性がコラボレーションして、全体のアンサンブルを創る。「風変わりワンダーランド」あるいは「不思議の国のキノコたち」といった趣だった。
ラストは、すべてのオブジェを組み合わせて食卓を作って、全員が囲んだ。観客もダンサーも振付家も、そしてオブジェたちも楽しかったに違いない。
(2012年2月27日 スパイラルホール)

tokyo1210b01.jpg 撮影/塚田洋一 tokyo1210b02.jpg 撮影/塚田洋一
tokyo1210b03.jpg 撮影/塚田洋一 tokyo1210b04.jpg 撮影/塚田洋一