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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2012.08.10]

洗練されたプログラム構成だった「下村由理恵バレエ・リサイタル」

DANCE for Life 下村由理恵バレエ・リサイタル2012
下村由理恵 振付『水の精霊』、篠原聖一 振付『Charlie』『Adagietto』『Season』

下村由理恵バレエ・リサイタルがDANCE for Life主催により、8年ぶりに青山円形劇場で開催された。下村由理恵振付『水の精霊』、篠原聖一振付『Charlie』、『Adagietto』、そして休憩の後、やはり篠原聖一が振付けた『Season』というプログラムだった。

tokyo1208g05.jpg 撮影:塚田洋一

ラストの『Season』は、奥田花純の妖精の導きにより、佐々木大と大畠律子、山本隆之と森本由布子、荒井英之と大長亜希子、佐々木大と下村由理恵、女性三人、下村由理恵のソロなどで構成されていた。特別に何か強いメッセージを主張しようというわけではないが、バレエのテクニックを組み立て様々な情感を描き、自然との融和を謳う。下村世代の三人の女性と円熟期を迎えつつある佐々木と山本、若手の荒井と下村率いるバレエ・アンサンブルのダンサー、というあまりかけ離れていないというか隣接する世代のダンサーを巧みに組み合わせて、流麗な展開をみせた。ダンサーたちの表現力のレベルが高く安定しているので、踊る喜びがひたひたと湧き出てくるような心地よい舞台となった。それぞれのダンサーが持ち味を出して良かったが、敢えてどれが良かったかと言えば、やはり、下村と佐々木のパ・ド・ドゥだろうか、艱難辛苦をくぐった佐々木ならではの平らかな心情が滲み出て、下村の美しさを引き立てたからだ。

tokyo1208g04.jpg 撮影:塚田洋一

開幕に踊られた『水の精霊』は、一本の木を舞台奥に設えた円形の舞台に、5人のひらひらの衣装を着けた下村由理恵バレエ・アンサンブルの女性ダンサーたちが踊った。下村らしい女性的な雰囲気を大切にしたオープニングだった。
シルクハットにチョビヒゲをたくわえた篠原のチャプリンと涙ぐんでいた少女(金子優)が出会い、ちょっとしたしかしなかなか味のある交流があった後、あの有名なラストシーンさながらのエンディング。このペアには世代格差があったのだが、それを作品のテーマに盛り込んだ。
そして佐々木、山本、下村の『Adagietto』は、生と死をみつめる自然の営みの中に生成する愛の一景を紡いだ。前半のバラエティある小品三作と後半の『Season』とのバランスも良く、全編の構成もなかなか洗練されていた。全体で主役の下村由理恵を控え目に称えた演出だが、じつは最も際立たせているところが心憎った。若手の荒井英之が先輩ダンサーに若さで対抗して存在をアピールしているのが印象に残った。下村由理恵バレエ・アンサンブルのダンサーたちも力をつけ、堂々と踊っていたのは心強い限りだった。
(2012年7月10日 青山円形劇場)

tokyo1208g03.jpg 撮影:塚田洋一 tokyo1208g02.jpg 撮影:塚田洋一 tokyo1208g01.jpg 撮影:塚田洋一