ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2012.08.10]

楽しかったアナニアシヴィリ率いるグルジア国立バレエ団特別プログラム

State Ballet Georgai Artistic Director Nina Ananiashviri
グルジア国立バレエ団 芸術監督ニーナ・アナニアシヴィリ
SPECIAL PROGRAM YUry Possokhov "Sagalobeli" , Alexel Ratmanansky "Bizet Variations"(pas de Six) , George Balanchine "Duo Concertant" Jiři Kylián "Falling Angels" Frederick Ashton ”Marguerit and Armand”
スペシャル・プログラム ユーリー・ポソホプ振付『サガロベリ』
アレクセイ・ラトマンスキー振付『ビゼー・ヴァリエーション』
ジョージ・バランシン振付『デュオ・コンチェルタント』  イリ・キリアン振付『Falling Angel』
フレデリック・アシュトン振付『マルグリットとアルマン』

グルジア国立バレエ団公演の特別プログラムは3部構成だった。
最初はユーリー・ポソホフ振付の『サガロベリ』。ポソホフは元ボリショイ・バレエ団のプリンシパルでニーナとも踊った。スリムな身体で繊細な表現を得意とするダンサーだった。
『サガロベリ』はグルジアの民謡とグルジア人の音楽を使い、ミソロジカルな印象を残す作品。男女3人のソリストとそれぞれ4人のダンサーが踊るのだが、民族舞踊的なステップとバレエのテクニックを融合させようと試みた動きが独特の雰囲気を醸し、音楽と衣裳の色彩感覚が良くマッチした美しい舞台だった。

tokyo1208b06.jpg 撮影/瀬戸秀美

第2部はアレクセイ・ラトマンスキー振付の『ビゼー・ヴァリエーション』とジョージ・バランシン振付『デュオ・コンチェルタント』、そしてイリ・キリアン振付の『Falling Angel』。
『ビゼー・ヴァリエーション』は、ニーナの要請によってラトマンスキーが振付、2008年にグルジア国立バレエ団により世界初演された。3組6人のダンサーが踊る。ラトマンスキーらしく、あまり怜悧さを感じさせず気さくで親しみやすい雰囲気を醸した。
『デュオ・コンチェルタント』は、ピアノとヴァイオリン、男性と女性のダンサー、音楽とヴィジュアルな動き、それぞれがデュオであり、愛の二元性を構成している、というなかなか洒落たセンスが感じられる作品だった。バランシンとストラヴィンスキーもまた、バレエへの愛を構成するスタッフであった。
『Falling Angel』はキリアンがスティーヴ・ライヒの有名な『ドラミング』を使って振付けたもの。このパーカッショの曲のリズム構成を、黒いレオタードの8人の女性ダンサーたちの踊りと融合させる。ユーモラスな仕草的な動きを加えて、女性が人生で直面する出来事を表し、それを「落下している天使」と軽いアイロニーに転化するところが誠にキリアンらしい。

tokyo1208b07.jpg 撮影/瀬戸秀美

そして第3部はアシュトン振付の『マルグリットとアルマン』。ニーナは、アルマンに扮したグルジア国立バレエ団のワシル・アフメテリとマルグリットを踊った。華やかな女っ振りの良さは相変わらず見事だが、さすがのニーナも少し生活感を感じさせてしまうところがあったのは悲しい。ドラマティックな表現は、彼女の得意とするところだが、こういった影を持った女性は持ち味とはちょっと異なるかもしれない、などと思った。
それにしてもニーナの人気はすごい。男性はもちろんだが女性にも絶大な人気がある。私の知り合いの女性ダンサーも修業時代に彼女から貰った励ましの言葉を、とても大切にして努力し励んでいる。故国に対する誠実な態度も立派だし、娘を産んでも最前線で頑張り、グルジア国立バレエ団を維持し、大いに発展させてきた。ボリショイ・バレエ団の芸術監督セルゲイ・フィーリンやラトマンスキーなどの後輩からも慕われている。そして何よりもニーナのダンスが踊る喜びに満ちていて、それが直接観客の胸を打つ。私はこの業界は長いほうだか、ニーナを悪く言う人には出会ったことがない、などという想いが胸を去来しながら、ニーナの舞台をあとにした。
(2012年7月21日 東京文化会館)

tokyo1208b01.jpg 撮影/瀬戸秀美 tokyo1208b02.jpg 撮影/瀬戸秀美 tokyo1208b05.jpg 撮影/瀬戸秀美
tokyo1208b03.jpg 撮影/瀬戸秀美 tokyo1208b04.jpg 撮影/瀬戸秀美 tokyo1208b08.jpg 撮影/瀬戸秀美