ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2012.03.12]

シェルカウイが手塚漫画を解体して創った美の有機体『テ ヅカ TeZuKa』

シディ・ラルビ・シェルカウイ振付『テ ヅカ TeZuKa』
Bunkamura(イギリス×日本×ベルギー国際共同制作)

Bunkamuraが初めてヨーロッパの劇場と国際共同制作した、シディ・ラルビ・シェルカウイの『テ ヅカ TeZuKa』が日本でも上演された。2010年に首藤康之が出演した『アポクリフ』に続いて、シェルカウイの新作を観ることができるのは胸はずむ思いだった。

tokyo1203j07.jpg 撮影:細野晋司

世界中の注目を集める日本のMANGA。外国のバレエダンサーの中にも日本の漫画やアニメに影響を受けた人は多い。おそらく私たちの想像している以上にその影響は大きのではないか。特に子供時代に親しむ文化だけに、今回の震災に対する世界の反応には、漫画で知った日本への温かい気持ちが投影されているようにも感じられた。ちなみに、この作品もリハーサルの初日に震災を体験している。

手塚漫画の最初のヒーロー、鉄腕アトムは唯一の被爆国の漫画家、手塚治虫から生まれた。そのために「神と人間」「主人と奴隷」と言う関係とは異なった、人間とロボットの関係が描かれている。
シェルカウイはモロッコ人の父とベルギー人の母の元に生まれ、ベルギーでフランスのテレビ局が放送する手塚作品ほかの日本のアニメを観て育った。彼は、ロボットと人間が共生するという考え方に強く惹かれ、35歳になった今もその思想を信じている、と語っている。

手塚漫画が森羅万象を自由に捉えて二次元の紙の上に描いたように、シェルカウイのダンスも手塚漫画の宇宙を自在に踊った。
パフォーマーは日本人の森山未来を始め上月一臣、大植真太郎の3人と鈴木書道家の稲水、そのほかはベルギー、アルゼンチン、ノルウエー、ポルトガルなど5人。ほかに少林寺武僧2名が出演している。音楽はニティン・ソーニーだがアントワープ在住で鼓童などにも参加している堀つばさ他も加わる。映像は上田大樹、衣裳はセルビア出身のサッシャ・ゴヴァチェヴィックなども参加。一体どうやってイメージをひとつにまとめるのだろうか、と心配になるほど渾然とした創作集団である。
そして鉄腕アトムやブラックジャックを始めとする手塚漫画の強烈な主人公たち、さらに漫画を描く動き、その紙、漢字、漫画宇宙を創る手、漫画そのもの原稿あるいはその吹き出しなどが、媒体にのってステージで変幻する。漫画の吹き出しの映像の中を出入りするキャラクターや漫画本を携えて踊るダンサー、飴のようにとろける漢字、大きな書の映像に跳びつくダンサー・・・・ダンスそのものをみるというよりも全体で独特の美(少しイスラムの香りもした)を織り出しているステージという有機体を、地上から眺めているかのような体験だった。そして「それが手塚体験なんだ」というシェルカウイのメッセージが聞えたような気もしたのである。

tokyo1203j01.jpg 撮影:細野晋司 tokyo1203j02.jpg 撮影:細野晋司
tokyo1203j03.jpg 撮影:細野晋司 tokyo1203j04.jpg 撮影:細野晋司
tokyo1203j05.jpg 撮影:細野晋司 tokyo1203j06.jpg 撮影:細野晋司