ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2012.02.10]
from Niigata -新潟-

群舞の迫力もいっそう加わった『ホフマン物語』

金森穣 演出・振付『ホフマン物語』
りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館

りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館のレジデンシャル・カンパニーであるNoismの公演。プロ・カンパニーであるNoism1と研修生カンパニーであるNoism2、両方のメンバーが出演し、2010年に初演された『ホフマン物語』が改訂され再演された。私は初演も観たのだが、基本的な流れは変わっていないものの、Noism2を含む群舞の迫力が大きく増すなど、前回以上に良い舞台にブラッシュアップされていたことを感じた。

tokyo1202j01.jpg 撮影:村井勇

この『ホフマン物語』を創る前までの金森穣の作品は、ストーリーのない抽象的なものが多かったと思うが、この作品は“物語”、ストーリー性のある作品。だが、彼の作品の傾向がガラッと変わったというわけではなく、金森が以前のいくつもの作品から、ダンサーという存在を考えるキーワードのようにこだわってきた“人形”、“娼婦”、“生け贄”が、ここでも描かれた。この作品では、この3つを井関佐和子が幕ごとに演じ分けたのだ。つまり、オペラでは3人のソプラノ歌手が演じる3人のヒロイン、“操り人形オランピア”、“男装の娼婦ジュリエッタ”、“病弱な娘アントニア”の3役を井関が1人で踊り、逆にホフマンを3人の男性ダンサー、藤澤拓也(木のホフマン)、宮原由紀夫(火のホフマン)、中川賢(水のホフマン)が踊った。
とにかく、井関佐和子の、どのようにでも動くように思える身体、役によってガラッと変わる雰囲気、不思議な強いオーラ……どれもが素晴らしく、ぐいぐいと舞台に引き込まれた。劇作家E.T.Aや3人のホフマンはじめソリストたちもそれぞれ適材適所のキャスティングで、その誰もが一定以上のレベルのダンサーであることを実感。そして、Noism2のメンバーによる群舞、劇場備品である大量の箱馬や平台を積み木のように組み合わせてさまざまな形にし、場面転換を行う振付は圧巻だった。
私は日本でコンテンポラリー・ダンスとされている舞台をいろいろ観ていて、なんとなく歯がゆい思いをすることがよくある。それは、ダンスと言いながら身体をきちんと鍛えられているように思えなかったり、一発芸のような偶然性にだけ頼ったものだったり……そういったものを観た時。例えば、鍛えられたダンサーが形だけ動いて、というものよりは、面白いこともあるかもしれない。けれど、それはプロのダンスではないと思ってしまう。
Noismのダンスは、紛れもないプロのダンスだ。確かなメソッドに基づいて、毎日、身体のトレーニングを行って、身体を作っているからこそ出来る動き。その上に個々の表現がそれぞれのダンサーの内面から溢れ出る。動きは緻密に組み立てられ、おそらく何度もリハーサルを重ねたからこそ出来るもの、そうでなくては絶対に出来上がらない磨き抜いたものが観客に提示される。だからこそ、観ていて心をグッと捕まれ、「観て良かった」と心から思える。才能を持った人が、きちんと時間を掛けて真摯に取り組んだからこそ質の良い芸術作品というものは生まれるのだ……と、当然のことながら、あらためて実感した。「芸術は爆発だ!」という有名な言葉があるけれど、いきなり爆発はしない、積み重ねた下地があるからこそ、ある時、それ以上のものが生まれる爆発が起こることがごくたまにあるのだと思う。
(2011年12月17日 りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館)

tokyo1202j02.jpg 撮影:村井勇 tokyo1202j03.jpg 撮影:村井勇
tokyo1202j04.jpg 撮影:村井勇 tokyo1202j05.jpg 撮影:村井勇