ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2012.02.10]

下村由理恵と佐々木大が舞台を活気づけた『Mary Poppins』

松崎すみ子演出・振付『Mary Poppins』;松崎えり振付『norte』『clouds』
バレエ団ピッコロ

松崎すみ子が主宰するバレエ団ピッコロのクリスマス公演は、この時期の風物詩とされる『くるみ割り人形』ではなく、自作の『Mary Poppins』をメインに置いたプログラム。バレエ『Mary Poppins』は、イギリスの児童文学作家P.L.トラヴァースが1934年に発表した小説に基づくもので、魔法を使う家庭教師メアリー・ポピンズが、バンクス家の人々に幸せをもたらすお話。ミュージカルとして映画化もされ、ヒットしただけに、ファンタジーあふれるこの物語は広く知られている。松崎は、ミュージカルの中の名曲を用い、子供たちにも出演の場を設けて、大人も子供も楽しめる一時間ほどの作品に仕立てた。主役のメアリー・ポピンズに下村由理恵、画家で煙突掃除夫にもなるバートに佐々木大が客演。厳格な銀行員のバンクス氏に小原孝司、婦人解放運動に熱心なバンクス夫人に菊沢和子、夫婦の娘ジェインに大野有以、その弟のマイケルに山崎美羽という配役だった。

tokyo1202h05.jpg 撮影/塚田洋一

賑やかな街の光景、面白く誇張した登場人物の描写、メアリー・ポピンズがバンクス家で発揮する不思議な力、絵の中に入り込む夢のような体験、愉快な煙突掃除など、少し説明的な部分もあったが、各場面を流れるようにつないで物語は進められた。ただ、バンクス氏と銀行をめぐるてん末は、描き方に工夫の余地がありそうだ。一番の見せ場は絵の中の世界で繰り広げられるダンス・シーンだろう。下村は白いワンピースを着て、バートの佐々木と躍動感あふれるデュエットを展開。佐々木のダイナミックなジャンプも冴えた。ほかに、妖精たちの群舞や可愛いペンギンたち、不思議な二人の滑稽なダンスなど、変化に富んでいた。メアリー・ポピンズはマイムや身振りによる演技が多いが、下村は芝居も達者なだけに生き生きと演じていた。佐々木は煙突掃除の場面でも切れの良いダンスで存在感を示した。なお、この作品は1998年に日本バレエ協会の〈バレエ・フェスティバル〉で初演されたようだが、公演プログラムにはそうした資料的なことも記載すべきだろう。

公演では、この『Mary Poppins』に先立ち、松崎えりの二つの小品が上演された。『clouds』(2005年初演)は、空に浮かぶ雲のイメージだろうか、白い衣裳の女性たちが、ソロやアンサンブルなど、様々なフォメーションで伸びやかに踊った。続く『norte』(2010年初演)では、アルヴォ・ペルトの音楽にのせて、松崎えりと増田真也が緊張感あふれるデュエットを展開した。ステージを切り取るような照明も効果的だった。密度の濃い作品だが、今回のような子供連れのファミリーを対象にしたクリスマス公演に、『norte』は少しシリアスすぎたように思えた。
(2011年12月25日、練馬文化センター)

tokyo1202h01.jpg 撮影/塚田洋一 tokyo1202h03.jpg 撮影/塚田洋一 tokyo1202h07.jpg 撮影/塚田洋一
tokyo1202h02.jpg 撮影/塚田洋一 tokyo1202h04.jpg 撮影/塚田洋一
tokyo1202h06.jpg 撮影/塚田洋一 tokyo1202h08.jpg 撮影/塚田洋一