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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2012.01.10]

『ファウスト・メフィスト』小林十市×大柴拓磨 ダンスアクト

小林十市、大柴拓磨 出演 大柴拓磨 演出・振付『Faust Mephistpheles』

ベジャール・バレエ・ローザンヌで活躍したが、近年は腰を痛めて芝居、テレビ、映画などへの出演が多かった小林十市が、新作を『ファウスト・メフィスト』に出演した。

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踊りの世界から遠ざかりつつあった小林が、結局、自分をフルに活用するにはどうしても踊りが重要なんだ、と確信して「何かやりたい、今、何かやらなければ」と切実に感じて、この企画は立ち上がった。そして、ベジャールの大作『我々のファウスト』の2011年再上演の予定が流れてしまったこともあって、ゲーテの『ファウスト』を題材とすることにした。ベジャール作品以外に新作バレエを踊ることは「まったく初めて」、という小林は、知り合いの推薦を受けて大柴拓磨に振付を依頼した。
大柴は、2001年こうべ全国洋舞コンクール男性シニアの部で第1位。その後、パリ・オペラ座と契約して『イワン雷帝』ほかに出演するなど海外でキャリアを重ねている。現在は実験的アーティスト集団Alphactを作って、演出家としても活動している。

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小林十市と大柴拓磨による『ファウスト・メフィスト』は、ゲーテの『フアウスト』をベースにして、可能な限り簡素化したダンス。素の舞台に小道具は平凡な椅子二脚と真紅の小さな布地だけだが、それがかえって効果的に感じられた。
一緒に仕事をするのは初めて、という二人が作品を創ることになった経緯を寸劇ふうに展開するオープニングから始まり、いつの間にかファウストのテーマに入っている。小林が芝居ができることを巧みに生かして観客の興味を刺激し、ダンスに導入していく上手い演出だな、と思った。
パントマイムとダンスをいろいろと組み合わせて、ファウストの人生が変転していく舞台が進行していく。小林のバレエ・ベースでまとまった動きと、大柴の大仰なアクションを加味したマイムとコンテンポラリーな動きが、なかなかいいバランスを保っていた。
ラストは、小林十市によるファウストの長いソロ。ちょっと甘さのあるというか気持ちの籠る魅力的な動きで、ベジャールの美がディテールにまで行き届いた見事な踊りだった。ファウストの魂が救済されて天に至る様子が、空想の中に具体的に像を結ぶかのようなダンス・シーンだった。
終演後のトークもあけすけで自由闊達で楽しかった。ダンスに還ってきた小林十市のこれからに大いに期待したい。
(2011年12月16日 新宿BLAZE)