ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2011.05.10]
東京では散ってしまったが、ゴールデンウィークにかけて東日本大震災の被災地が桜のシーズンを迎える。甚大な被害を受けた地に桜花が爛漫と咲く光景は、いっそう悲しい想いがする。 当然のことだが、じつに様々な形で不運にも被災された方々はほんとうに様々な気持を持つことを強いられているのだから、決して簡単に推し量ることはできない。 震災に関して私たちメディアは極めて慎重に対処しなければならない。それは阪神淡路の震災の際に切実に感じたことだが、たとえ励ましのメッセージであっても、メディアとしては慎重にとりあつかわなけなければならないと自戒している。

吉田都とヒリストフが踊ったスターダンサーズ・バレエ団『シンデレラ』

鈴木稔:演出・振付『シンデレラ』
スターダンサーズ・バレエ団
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3月の東日本大震災の影響を受けてダンスに限らず多くの公演が中止となった。スターダンサーズ・バレエ団もこの『シンデレラ』の準備中に震災が勃発して、様々な選択肢を考慮して逡巡したようだが、結局、カンパニーの本来の仕事を行うために上演することとしたという。

スターダンサーズ・バレエ団の『シンデレラ』は、吉田都と英国ロイヤル・バレエ団のファーストソリスト、ヴァレリー・ヒリストフを招いて踊られた。演出・振付は鈴木稔、音楽はセルゲイ・プロコフィエフの曲が使われている。
鈴木の演出・振付は四季の精の代わりに、貧しく虐げられていたシンデレラがキッチンで密かに可愛がっていたネズミのカップルを登場させたり、シンデレラの家族環境を今日を映した姿に改めるなど工夫を凝らし如才なくまとめている。特にネズミが仙女の魔法によって、シンデレラの優しさの精とも言えるような可愛いらしいカップル(シンデレラの小さな友だち)となって、王子との恋をサポートするというアイデアは秀逸だ。彼らは孤独なシンデレラが親しみ、心を通わせていた仲間だから見ていて楽しくなり、観客は自ずとシンパシィを感じて応援したい気持ちを沸き起こす。
ただ<四季の精>という発想には、自然と人間あるいは時間と人間といった、作品の基本的なモティーフが込められているわけだから、バレエは可愛らしくなったがそうした部分は少し弱くなったといえるのかもしれない。しかしエンディングでは、小さな友だちの少女が一緒にがんばった男の子の頬にキスを贈ってハートウォーミングな余韻を残して全体を締めくくったから、このアイデアは充分に成功したと思う。

第2幕の宮殿のシーンでは、多くの登場人物の複雑な動きを巧みにコントロールして、義母、義姉妹に負けず劣らずシンデレラの小さな友だちも大いに活躍したし、12時の時間切れまで緊張感を失わない見事な舞台構成だった。
ヒリストフは長身で彫りの深いマスクのなかなか魅力的なダンサー。第2幕では様々な出来事の後、満を持して登場したが、王子らしい素敵な存在感で観客を納得させた。吉田都はさすがに落ち着いて舞台全体に配慮して踊り、とてもよい雰囲気を作った。踊りの正確さはもちろん、細かな感情の表し方などは過不足なくじつに見事だった。ただ見せ場である、シンデレラと王子のパ・ド・ドゥは新しい動きを作ろうとする振付と二人のコンビネーションから高度な音楽性のある流れが、もうひとつ感じとれなかったのは少し残念だった。
(2011年4月7日 テアトロ・ジーリオ・ショウワ)

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Photos:(c)A.I Co.,Ltd.
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