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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2011.02.10]

真実の愛がまやかしの幻影に勝利する、松山バレエ団の新『白鳥の湖』

清水哲太郎:構想・構成・台本・演出・振付 新『白鳥の湖』
松山バレエ団
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松山バレエ団の清水哲太郎による新『白鳥の湖』は、公演する時はほとんど毎回のように、演出・振付に手を加えているそうだが、基本的にはこの伝説に基づいたバレエを現実の愛の勝利の物語として描いている。オデット、オディール、ジークフリードはもちろん、ロットバルトもヴォフガングやベンノも実在の人物としての名前を持っており、出来事には現実世界の歴史上の時間が与えられている。
第1幕はジークフリードの戴冠を祝う集いであり、第3幕は聖なる戴冠の儀式である。ロットバルトは政権の簒奪を企み謀をなす乱入者であろう。第3幕のディヴェルテスマンは原典とは大きく変えられているが、これは花嫁候補を送りこんできた中世の国々を想定して踊られているのだろう。
チャイコフスキーの音楽に登場人物のドラマティックな心理を描写する劇伴的なものが加えられている。その点も新『白鳥の湖』にとっては必要なことなのである。ジークフリードが黒鳥オディールに欺かれたため、公女オデットは白鳥の姿のまま嘆くが、激しく悔い改めたジークフリードと純粋な愛を貫き凄絶な闘いのすえに、ロットバルトの邪悪な精神を打ち破ることができた。真実の愛がまやかしの幻影に勝利したのである。
そして森下洋子のオデットの素晴らしさを讃えなければならない。心持ちふくよかな印象を受けたが、白鳥として捕らえられていることが偶然に起った悲劇ではなく、宿命的というか王族の存在としての悲劇を表現する踊り、となっているところはさすが。特に良く踊り込まれている第2幕のアダージョは素晴らしかった。全体的に歴史上の現実の物語であることを強調するための仕掛けが、やや大仰過ぎる気がしないでもない。しかし演出家の趣旨にそった美術・装置なのである。
(2011年1月28日 NHKホール)

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