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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2010.11.10]

茂田絵美子が主役デビューを飾った『ラ・シルフィード』

George Baranchine “Serenade”/August Bournonville “La Sylphide”
ジョージ・バランシン振付『セレナーデ』/オーギュスト・ブルノンヴィル振付『ラ・シルフィード』 
牧阿佐美バレヱ団
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牧阿佐美バレヱ団が、ブルノンヴィルによるロマンティック・バレエの名作『ラ・シルフィード』と、抽象バレエの名手バランシンによる『セレナーデ』を上演した。特に『ラ・シルフィード』は、今回が12年振りの上演で、また主役のシルフとジェイムスに、今回が初役というダンサーをダブルキャストの両日に配したこともあり、注目度は高かった。

最初に上演されたのは『セレナーデ』。バレエ団として初演したのは1995年と比較的新しいレパートリーで、今回は5年振りの上演という。青い背景に、脚のラインが透けて見えるチュールをつけて整然と並んだ女性ダンサーたちが、音楽に弾かれたように踊り始めた。アメリカのバレエスクールの生徒たちのため、授業の一環として構想されたものだけに、基本のステップがメインだが、それが洗練された美しさで迫ってくるのは、バランシンの才能だろう。ソロやデュオで見せた田中祐子の、安定感のある滑らかな踊りが印象に残った。田中と組んだ逸見智彦は、調子が悪かったのかコントロールが乱れたのが惜しまれた。森田健太郎は、笠井裕子らを相手に丁寧にステップをこなしていた。群舞の女性ダンサーは総じてよく揃っており、抒情的な透明感を漂わせた。

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『ラ・シルフィード』は、スコットランドの農村を舞台に、エフィとの結婚式を控えたジェイムスが、森の妖精シルフに心を奪われたことから起こる悲劇を描いたもの。
牧阿佐美バレヱ団が用いているのは、ローヴェンスヨルドの音楽によるブルノンヴィル版である。初日にシルフを演じたのは、これが主役デビューという茂田絵美子。ジェイムスを惑わす場面では、もっとコケティッシュであってもと思ったが、彼がエフィと結婚するのを知った後の悲しみを滲ませた表現は巧みだった。最初はステップやジャンプが硬く思えたが、ドラマが進むにつれて足さばきも軽やかに舞った。均整のとれた身体の持ち主で、テクニックも確かなようで、これからが楽しみだ。
ジェイムス役は菊地研。ブルノンヴィルの複雑なステップをスムースにこなし、純朴だが直情的で身勝手なジェイムスを造形した。ただ、動きに入る前の間合いや共演者との演技の息遣いに、もう少し配慮が欲しい気がした。参考までに、2日目のシルフは青山季可、ジェイムスは京當侑一籠が踊った。

魔女マッジ役は両日とも吉岡まな美。初役だそうだが、凄みを利かせた演技でドラマを引き締めた。初日にエフィを演じた日髙有梨は、この役にしては少々きつい感じがした。もう少し柔らかさがあってもと思った。バレエ団として久々の上演だったからか、バレエだけでなくマイムの指導にも力が入っていたようで、総じてレベルの高い舞台に仕上がっていた。
(2010年10月23日、ゆうぽうとホール)

撮影:山廣康夫
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