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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2010.10.12]

虐げられた民衆のエネルギーを解放するバレエ、新『白毛女』

清水哲太郎:演出・振付 新『白毛女』
松山バレエ団
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『白毛女』は中国の革命歌劇で延安の魯迅芸術学院が創作し、1945年に初演されている。50年には王浜・水華監督により映画化され、52年に東京で上映された映画『白毛女』を、松山樹子と清水正夫が観て感激し、バレエ化したいという想いを抱いた。
そして55年には日比谷公会堂で松山樹子主演により、バレエ『白毛女』が初演された。さらに58年には、松山樹子主演による第1回訪中公演が北京、重慶、武漢、上海で行われた。その後、日本各地でも上演され、71年には第4回の訪中公演が行われ、清水哲太郎の新演出によるバレエ『白毛女』が森下・清水の主演によって上演された。また、1965年に胡蓉蓉の振付、台本により上海市舞踏学校がバレエ化している。
 

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今年、松山バレエ団では原点に回帰するという想いを込めて、第3次の改訂演出による新『白毛女』の第1回試演会を行った。演出・振付および舞台美術は清水哲太郎。原作は延安魯迅芸術学院、音楽は上海市舞踏学校、作曲は厳金萱、上海芭蕾舞団の協力を得ている。
物語は、貧しいが父の愛に恵まれた喜児という美しい娘が、婚約者の村の若者、大春との結婚を前に、地主により略奪され犯される。婚約者は追放され、喜児は親の借金のために娼家に売られる。なんとか脱出し、厳しい困苦の中、山野に隠れて生き延び、黒髪は白髪に変わってしまう。しかしやがて、解放軍に参加していた大春と再開を果たす、というもの。虐げられた中国の民衆に潜む底知れないエネルギーを革命が解放する物語である。
髪が白髪となるまでの困難に耐えて生き抜く、フェニックスのようなパワーを森下洋子が小柄な身体のすべてを使って表現している。そこには森下がバレエに注いだ情熱をそのまま舞台に表したかのような、躍動する心が感じられた。
極貧の中で婚礼を祝う唯一の品だった赤い元結いが、喜児と大春を繋ぐ希望の象徴として、じつに効果的に使われていた。
舞台美術はよく考えられていて、物語の展開を分かり易く表していたし、なかなか力のこもった革命を讃歌する叙事的なドラマだった。それだけに閉幕後の言葉によるメッセージは、バレエの表現にしては少々過剰とも感じられた。
(2010年9月18日 ゆうぽうとホール)