ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2010.07.12]

ウィリとなったジゼルの愛は慈しみのこもった母の愛情となった

安達哲治 演出・振付『ジゼル』
NBAバレエ団
tokyo1007g01.jpg

NBAバレエ団では、芸術監督の安達哲治が演出・振付けた『ジゼル』を上演した。安達は『ジゼル』を、パリ・オペラ座のエトワールだったイベット・ショヴィレから修得している。また、プログラムに記されているように、ショヴィレはジゼルの踊り手として特別視されていたオリガ・スペシフツェワからその教えを受けた。

当初はオペラ座のエトワール、デルフィーヌ・ムッサンが出演する予定だったが、『ドガの踊り子』のリハーサル中に右足に怪我を負い、急遽、プルミエダンスーズのミュリエル・ズスペルキーが踊った。
スズベルキーは手指を印を結ぶように滑らかに使って演技の説得力を出す踊り手。鮮烈な身体性を際立たせて踊るわけではないが、全身を柔らかく滑らかに動かして優れたジゼルを造型し、ごく自然に感じられる人物像を踊った。バランスが良く好感の持てるジゼルの踊り手である。

tokyo1007g04.jpg

2幕でも特別強烈な存在感をアピールしようとするわけではない。しかし、ウィリたちに死に瀕するほど踊らされたアルブレヒトが夜明けの鐘の音に救われたのを見届け、魔界に戻りながら見詰める眼差しは、幼子の安らぎに安堵する母のものだった。ウィリとなったジゼルの愛は、母性的な慈しみのこもった愛情に変わり、アルブレヒトの再生を優しく助け、見守るかのよう。
アルブレヒトが初役となる秋元康臣は2幕では優れた身体能力をみせた。惜しむらくは、急遽、パートナーが変更になったためか1幕での愛情表現が少し弱かった。貴族のアルブレヒトは村娘の純朴さと自由な振る舞いに、村娘のジゼルはアルブレヒトのノーブルな佇まいと優しさに惹かれる。二人の愛は階級を超えたエキゾチックな愛であり、お互いにその運命とはかなさを知らず知らずのうちに理解している、といった表現がこの作品には求められている。
(2010年6月20日 メルパルクホール)

tokyo1007g02.jpg tokyo1007g03.jpg
tokyo1007g05.jpg tokyo1007g06.jpg

※画像をクリックすると、大きな写真をご覧いただけます。