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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2010.05.10]

古き良き雰囲気をもったバレエ協会のスキーピング版『ジゼル』

Japan Ballet Association
Mary Skeaping : "Giselle"
日本バレエ協会公演
メアリー・スキーピング:復元振付・演出『ジゼル』
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日本バレエ協会の都民芸術フェスティバル2010公演は、メアリー・スキーピング版の『ジゼル』。スキーピングは英国に生まれ、マシーン、アスタフェイワ、エゴロワなどに学び、アンナ・パヴロワ・バレエ団で踊り、レペトワールとしても活動した。そしてキャバレー・ショーやミュージカル、あるいはクルト・ヨース、ラバンなどにも師事している。さらにサドラーズ・ウエルズ・バレエ団(後のロイヤル・バレエ)、アロンソのキューバ国立バレエ団などに関わった後に、スウェーデン・ロイヤル・バレエ団の芸術監督となり、ドロットニング宮廷劇場のためにバロック舞踊を研究し、『ジゼル』の三つのヴァージョンを演出している。また1971年には、ロンドン・フェスティバル・バレエ(現イングリッシュ・ナショナル・バレエ)にも『ジゼル』を振付けている。
キャリアの説明が長くなったが、スキーピングは基本的には、チェケッティ系のバレエを学び、バロックなどロマンティック・バレエ以前のバレエへの研究によって、『ジゼル』の原振付の復元を試みていた、ということができるだろう。
 

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第1幕では、葡萄の収穫祭を祝う踊りが繰り広げられて、ジゼルとアルブレヒトが楽しく踊るシーンが長めに描かれる。祭りの日は様々の階級の多くの人々が集って踊り回って、踊りの楽しさと恋人たちの高揚する気持ちがしっかりと表現されているダンス・シーンだった。
第2幕の冒頭は、車座になってバクチをやっていた森番たちがウィリに追い立てられる。さらにジゼルの墓を訪れたヒラリオンが捕まり、休まず踊り続けさせられる。ここは今日の多くのヴァージョンでは省略されたり変えられてしまう何気ないシーンだが、ウィリたちが棲む恐ろしい森が何処か特別の場所にあるのではなく、村人たちが生活しているところと直接繋がっていることを示していて、原振付家にとっては意味のある表現だった。確か、キューバ国立バレエ団のアロンソ版『ジゼル』にもこれに近いシーンがあった、と記憶している。

ジゼルは酒井はなが踊ったが、よくこのヴァージョンの趣旨を理解して明快に踊っていた。さすがに勘の良い、優れた表現力をもつバレエダンサーである。アルブレヒト伯爵<ロイス>役はファビアン・ライマー。ウィーン出身でマリカ・ベソブラゾヴァに師事し、現在はイングリッシュ・ナショナル・バレエで踊っている。このスキーピング版のアルブレヒトは当たり役だそうだ。確かにソフィステケイトされた古風な雰囲気をもつ踊りだった。
こうした原初に還る心をもって踊るということは、特に『ジゼル』のような古くから世界中の人々に愛されてきたバレエにとっては、やはり必要なことなのだ、という想いを抱いた公演だった。

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