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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2010.04.12]

コンテポラリー・ダンスの自由な動きと能の象徴的リアリズムの共演

Alessio SILVESTRIN Chopin Noh Dance TE NO UTA
アレッシオ・シルヴェストリン ショパン 能 ダンス『手の詩』
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渋谷のセルリアンタワー能楽堂が主催している「伝統と創造シリーズ」の3回目は、ショパン生誕200周年祝祭公演と銘打った『手の詩』だった。このシリーズは「能楽堂というもっとも古い古典様式の空間を、コンテンポラリーの振付家がどのように解釈し、扱っていくかを問いつづける」企画で、毎回様々の試みを行っている。今回は、ショパン生誕200年を記して「ショパン 能 ダンス『手の詩』」を公演した。

2部構成となっており、最初は、ショパンの前奏曲、能管独奏、アレッシオ・シルヴェストリンが能の『中之舞』から起こした楽譜に基づいて作曲した『面影』、ショパンの幻想曲などが演奏された。
続いて上演されたのはアレッシオ・シルヴェストリン演出・振付の『手の詩』。出演は能楽師、津村禮次郎とコンテンポラリー・ダンスの振付家、ダンサーの中村恩恵だった。ショパンの前奏曲。練習曲。夜想曲の一部を構成し、ショパンと9年間に渡って交際を続け、夥しい往復書簡を残したジョルジュ・サンドのテクストを使った舞台である。

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まず、橋掛かりから上下とも黒い衣装を着けたスリムで清楚な印象を際立たせた中村恩恵が摺り足で姿を現す。ショパンのメロディとともに様々表情をつけながらコンテンポラリー・ダンスの動きを繰り広げる。比較的シンプルな動きだがラインは柔らかい。動きの表情は饒舌にも見えるが過剰さはなく、なかなか能舞台に映える素敵なダンスで、北川暁子が奏でるショパンのピアノ曲とは、寄り添わずしかし遠く離れず、不即不離の距離を保っていた。
やがて女系の面と能衣裳を着けた津村が登場し、ジョルジュ・サンドのテキストを語る。中村が翁系の面を着け簡素な能衣装風なものを羽織り、舟形が現れる。マジョルカ島へのサンドとショパンの旅を示唆している。病の中、死の体験と自然と人間を超越したかのような、音楽創造の有り様が、サンドのショパンへの深い愛情の中に浮き彫りにされた。自由なコンテポラリー・ダンスの動きと能の象徴的リアリズムの共演で、舞台には香気が満ちていた。副題に挙げられたショパンと能とダンスが、この会場を使いこなしてきたアレッシオらしい洗練された融合をみせた舞台だった。
(2010年3月20日 セルリアンタワー能楽堂)

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(C)TOSHI HIRAKAWA(D-CORD)
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