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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.12.10]

東京小牧バレエ団が『シェヘラザード』他のバレエ・リュス作品を上演

バレエ・リュス『牧神の午後』『薔薇の精』『パ・ド・カトル』『シェヘラザード』
東京小牧バレエ団

東京小牧バレエ団は今年、創立63年目を迎えた。1946年に小牧正英が上海より帰国し、終戦間もない日本で蘆原英了、東勇作、島田廣、服部智恵子、貝谷八百子などと東京バレエ団を結成、初めて『白鳥の湖』全幕を上演したことはよく知られている。
この時から『眠れる森の美女』『ジゼル』『ペトルーシュカ』『火の鳥』などが、日本の舞台でもつぎつぎと上演されるようになり、今日のバレエの礎が築かれた。
その頃、いわゆる上海バレエ・リュスで踊っていた小牧正英は、『白鳥の湖』全幕のピアノスコアを所持するなど、日本のバレエ界を立ち上げるために大きな貢献を果たした。(小牧正英が主として踊っていたのは、上海のライセアム・シアター。この劇場の今日の様子は以前ルポしたことがあるので関心のある方はご参照ください。(上海のバレエを訪ねて
残念ながら2006年小牧正英は逝去してしまったが、東京小牧バレエ団はその遺志を受け継いでNPO法人を設立。今回はその設立記念公演と銘打たれている。

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まずは『牧神の午後』と『薔薇の精』が上演された。
『牧神の午後』は1912年5月パリ・シャトレ座で初演された。音楽はドビュッシーの『牧神の午後への前奏曲』。
この作品は、牧神が午睡の中で観たニンフとのエロティックな幻想を、独特のゆっくりした動きによって描いている。この動きは、ギリシャの壺に描かれていたレリーフから着想した、と言われているが、ギリシャ神話の世界を幻想的に表すためには非常に効果があったと思われ、天才振付家、ニジンスキーの才能の一端を今日に伝えている。
ニジンスキーが踊った牧神は李波。ニンフ役は斎藤由佳が踊った。ともに細身で滑らかな動きだった。
『薔薇の精』は、ウェーバーの曲「舞踏への招待」を使い、ゴーティエの詩にインスピレーションを得てフォーキンが振付けた。初演は1911年4月モンテカルロ劇場である。ニジンスキーが踊った薔薇の精を桑原智昭が踊り、カルサヴィナが踊った少女の役を藤瀬梨菜が踊った。
初めて舞踏会から戻って未だ興奮が冷めない少女の一睡の夢。薔薇の精と少女の息のあったパ・ド・ドゥだった。

『パ・ド・カトル』は、プーニの音楽を使って当時の世界4大バレリーナと言われたタリオーニ、エルスラー、グリジ、チェリートを一堂に会して、ペローが振付けた作品。その後、マシーンに続いてディアギレフの寵愛を受けてバレエ・リュスで踊ったアントン・ドーリンが1941年に振付け、このヴァージョンが今日も残されている。
今回の公演では、近年、東京小牧バレエ団と交流を深めているモンゴル国立バレエ団が踊った。振付はゲレルチメッグ・ホロルダグワ。モンゴル国立バレエ団の女性ダンサーの踊りは初めて見たが、静かに情感豊かに踊る落ち着いたステージだった。

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最後は、リムスキー=コルサコフ作曲の『シェへラザード』。フォーキンが振付け、1910年6月にパリ・オペラ座で初演された。日本では1946年に小牧正英が改訂を加えて初演されている。
小牧版は、開幕の前と終幕の時に、スルタンの愛妾ゾベイダの悲劇を知った後世の娘シェヘラザードへの語りが加えられている。
ゾベイダを周東早苗、金の奴隷をエンバ・ウィルスが踊った。バクストの豪奢な色彩の中に、ゾベイダと金の奴隷のエキゾティックなダンスが繰り広げられた。
こうして、バレエ・リュス100年と記念すべきNPO法人設立が重なった東京小牧バレエ団の「ディアギレフバレエ・リュス誕生100年に捧ぐ」公演が、様々な作品を上演して幕を下ろした。
(2009年10月24日 新宿文化センター大ホール)