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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.04.10]

下村由理恵と佐々木大が踊った日本バレエ協会の橋浦版『眠れる森の美女』

橋浦勇 改訂振付・演出『眠れる森の美女』~プロローグと全3幕~
日本バレエ協会
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 日本バレエ協会は、1971年の笹本公江が振付けたヴァージョン以来アンナ=マリー・ホームズ版も含めて『眠れる森の美女』を7回上演している。すべての舞台を観たわけではないが、1990年にノエラ・ポントワが踊ったオーロラ姫は、未だに印象に残っている。
 ミテキ・クドーの母でもあるポントワは、当時、46歳、すでにパリ・オペラ座のエトワールからリタイアしていた。しかし、その細やかで豊かな表現力は、登場しただけで16歳の少女の輝くばかりの初々しさを、ダンスの動きの中に見せた素晴らしい舞台だった。

 今回は、バレエ協会の最初の公演でカラボスを踊り、アンナ=マリー・ホームズ版では舞台制作に関わった橋浦勇が改訂振付・演出にあたった。
 演出は、ディティールに種々手を加えているが、デジレ王子が伯爵夫人との愛に決別したところから、リラの精に導かれてオーロラ姫と出会う、というところが新しい解釈となっている。
 ヌレエフは『眠れる森の美女』を新たに演出した時、2幕の初めに王子の長いソロを入れて真実の愛を求める強い気持ちを表したが、この作品では、リラの精に導かれるとはいえ、100年の時を隔ててデジレ王子が永遠とも思われる眠りに陥っているオーロラ姫を探しにいくいきさつに、説得力をもたせなければならない。そこが『眠れる森の美女』の新演出のひとつのポイントでもある。

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 橋浦の演出はこの作品に、よくいわれるリラの精とカラボスに表される善と悪の対立よりも、100年という時間が表すドラマ-----世代交代をテーマとした、という。デジレ王子は過去の愛に決別し、オーロラ姫との新しい愛を得てに新しい人生を始める。そこにひとつの時代の終りと新しい時代の始まりを表したと思われる。
 また、第3幕のディヴェルティスマンの前に、新たにパ・ド・ドロワが踊られたのも新しい試みだった。これは結婚式の厳かさを表すのには効果的だったが、そのためにダンスシーンが3幕に集中してしまったような気もした。

 下村由理恵がオーロラ姫、佐々木大がデジレ王子に扮した初日を観た。ふたりともダンサーとして成熟した堂々たるダンスを見せてくれた。佐々木は新演出の特徴となる王子を心理的にもよく理解して踊っていたし、下村の華やかさとともよく似合った舞台だった。青い鳥を踊った秋元康臣が清新な踊りをみせたし、パ・ド・トロワの大長亜希子、八島香奈恵、土方一生もしっかり踊った。
(2009年3月25日 ゆうぽうとホール)