ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2008.01.10]
明けましておめでとうございます。 本年も「Dance Cube」を、微力ながらよりいっそう充実させるべく努力を重ねていく所存です。 特に内外の<ダンサーの声>をできるだけとりあげ、日々変化する情報をお伝えしてまいりたいと思います。至らない点も多いとは思いますが、どうか暖かい目で見守っていただきたいと存じます。どうぞどうぞ、よろしくお願いいたします。

太刀川瑠璃子の80歳を祝うスターダンサーズ・バレエ団の公演

「アレグロ ヴィーヴォ」
 スターダンサーズ・バレエ団の2007年12月公演は、カンパニー創設者の太刀川瑠璃子の傘寿を祝うもの。会場には、若き日に舞台で活躍した太刀川の英 姿颯爽とした数々の写真が飾られ、太刀川の影響によってバレエの道に関係した人々がお祝いの言葉を贈ろうと集い、華やかな雰囲気に包まれていた。

当初は、吉田都とロバート・テューズリーがマクミラン振付の『ロミオとジュリエット』のバルコニーのパ・ド・ドゥを踊ることになっていたが、怪我のため 中止となった。代り予定になかった小山恵美振付の『アレグロヴィーヴォ』(音楽ビゼー)が踊られた。また、佐々保樹振付『ゼファー』(音楽リスト)、関直 人振付『陽炎』(音楽シベリウスの「トゥオネラの白鳥」)といった、太刀川と縁の深い舞踊家の作品が上演された。

そして最後に上演されたのはストラヴィンスキー音楽の『火の鳥』。かつて最も長期にわたってスターダンサーズ・バレエ団の芸術監督を務めた遠藤善久の振付で、現在はマルセイユ国立バレエ団で踊っている子息の遠藤康行が追加振付を行っている。
舞台構成にドナルド・リチーの名がクレジットされていて、オリジナルを尊重してフォーキンの台本に従って創られた、とプログラムに解説されていた。しか しまた、遠藤康行の手が加わり、林ゆりえ(火の鳥)、新村純一(王子イワン)、松坂理里子(ツァレブナ姫)という若いダンサーが踊り、装置、衣裳もこの公 演のために新しく製作されているためか、今日風の印象を残す舞台だった。
新村のイワンは若さのエネルギーが感じられて良かったし、王子と姫の出会いから始まるパ・ド・ドゥもなかなか新鮮だった。
特に動きは、頭に触れたりするコンテンポラリー・ダンスにも見受けられるものや、女性ダンサーがフロアに腰を落として回るなど独特のものが織り込まれて いた。そうした動きと、1910年にこの作品で一躍名を上げたストラヴィンスキーの音楽との共振は、私にはもうひとつだったが、できればもう一度観て確か めてみたい、と思う。
ロシアの民話を素材とする『火の鳥』は、多くの振付家を触発して舞踊化されている。それはもちろん、ストラヴィンスキーの音楽が素晴らしいからだが、そ のほかに金色に輝くロシアならではの独特の色彩感と、象徴性を秘めた神秘的な物語世界が魅力的だからだろうと思う。

太刀川瑠璃子が日本のバレエ界に尽くした功績については、今更あれこれ述べるまでもなく、公演プログラムにも丁寧に記載されている。
日本を代表するプリマとして踊り、後にナショナル・バレエの確立を目指してバレエ・プロデューサーとして意欲的に活躍した太刀川のバレエ人生は、「日本バレエは、良かれ悪しかれ観客と共に歩んで行かざるを得ない」と、暗黙のうちに語っている。
1964年に始まるスターダンサーズ・バレエ団の公演記録には、チューダーを始めとする20世紀の重要な振付家、ヨース、バランシン、トバイアス、ロビンズ、ライト、フォーサイスなどと共に、多くの日本人振付家の名前が並んでいる。
ただ単に、ひとつのカンパニーが創設されてこのような公演が行われた、という事実だけに限って見ても、そこに太刀川の過酷な闘いがあっただろうことは、簡単に推察できる。そしてそこには、次の世代が背負う課題のアウトラインが示されている。
(12月1日、ゆうぽうとホール)
「陽炎」「火の鳥」「火の鳥」