ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2007.11.12]

牧阿佐美バレヱ団「ダンス・ヴァンテアンXI~Starlet~」

『ヴァリエーション for 4』
「ダンスヴァンテアン」は、バレエだけでなくコンテンポラリー・ダンスやフラメンコなどもプログラムに採り入れる、牧阿佐美バレヱ団の創作意欲を表す公演。
11回目の今回は<Starlet>とタイトルが付され、好評だった三谷恭三の振付作品を選んで、新しい世代のダンサーを起用することを主眼としている。

まずは2000年に初演した『ヴァリエーション for 4』。ウィリアム・ウォルトン作曲の『ファサード組曲』を使った男性ダンサー4名のヴァリエーション集で開幕した。ジャズやラテンの曲想も交えた明るい音 楽に合わせて、黒いハットをもって踊られる。4人の踊りで始まり、一人ずつのヴァリエーションがあり全員の踊りで終わる、コミカルなタッチのダンス。ダン サーそれぞれのキャラクターのコントラストを感じることができて楽しい。

続いて踊られた、ボフスラフ・マルティヌーの『交響曲第6番』による『ペルソナ』は、1993年の第1回で初演された振付の改訂版。牧バレヱ団に縁の深いアザリー・プリセツキーに贈られた仮面にインスピレーションを得て創られたものだという。

舞台奥に設置された鏡の中からイルギス・ガリムーリンが現れるが、その背後にはボリショイ・バレエ・アカデミーに留学し、全国舞踊コンクールで一位と なった清瀧千晴が見え隠れして付けている。ふだんは隠れているあるいは隠している自分が時折、顔を出し、闘いと協調が踊られる。自分自身を見つめ直すよう なダンスもある。
ベジャール風の動きやポピュラー・ダンスの振りなどもみられたが、フォルムは確実にテーマを表しいて、登場人物の心理がはっきりと感じられる構成となっていた。

1997年にやはり「ヴァンテアン」で初演された『ガーシュウィンズ・ドリーム』は、まず、ヴァイオリニストの山本有沙が舞台に登場する。その演奏に合 わせて群舞が踊られ、その中を主役を踊るガリムーリンや伊藤友季子、青山季可などが通行人のように舞台を横切っていく、という洒落たオープニングになって いる。
 美術・衣裳は前田哲彦だが、背景は太い黒い斜線を使った抽象デザインで、間に映される色がシーンによってブルー、オレンジ、赤などに変化する。
伊達男、ガリムーリンと美女、伊藤友季子を巡る軽いやりとりを見せながら、シルエットを効かせるなどヴァラエティに富んだフォーメーションが細かく構成 されていた。ヴィジュアルも美しく、ガーシュウィンの名曲のイメージを余すところなくみせてくれた。あともう一歩、ミュージカル的なダンスを凌駕するパ ワーも欲しいとも思ったが、やはり、久々に清涼感のあるモダニズムの舞台を楽しく観ることができた嬉しい気持ちが勝った。

『ペルソナ』『ガーシュウィンズ・ドリーム』

(10月21日、ゆうぽうとホール)