ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2007.04.10]

能美健志ソロパフォーマンス『ビオトープ』

「能 美健志&ダンステアトロン21」として群舞やデュオの作品を創作してきた能美が、初めてソロ作品に挑んだ。タイトルの『ビオトープ』は、生物群集が有機的 に結び付いて生息する自然な環境の意味だろうか、エコロジーへの関心の高まりと共に、脚光を浴びるようになった言葉である。東京・月島にある元倉庫の一室 を会場に選び、部屋の一隅を踊りの空間とし、客席とつながる形にしたのは、一種のビオトープの提示かも知れない。演出・構成には、能美と何度か協同してい る作曲家で歌手のさとうじゅんこも加わっている。

 


  無音の中、暗闇が少し薄れると、床に座る能美の姿が認められる。黒のとっくりに黒のズボンだ。そのシルエットが拡大して壁に投影され、のっそり動き始め た。サインのような仕草を繰り返し、あんぐり口を開けてもみせる。流水の音や車の騒音も聞こえてきた。一旦退場した能美は、ウサギのような長い耳をつけて 戻ってきた。四つん這いになり、何かをむしり取っては口に運ぶ動作を繰り返し、ウサギらしからぬ獣性ものぞかせた。ウサギの耳をはずし、黒のロングドレス になって、激しくのたうち回りもした。


光の円環や棒状の光が揺れ動く映像が空間の奥行きを深めたと思ったら、突然、能美の顔が映し出された。口をすぼめ、舌先を出しと、滑稽な表情を見せるそ の顔が三つに増え、極端に縦長に引き伸ばされたかと思うと、いくつもの正方形に分割された画面に、クローンで増殖したような同じ顔が映され、壁一面を埋め 尽した。白のランニングにゆったりズボンに着替えた能美は、腕を羽のようになびかせたり、頭上で交差させたりして、別の生き物をイメージさせた。こうして 一時間にわたり、様々に変化(へんげ)し、雑多な生き物がうごめくビオトープの諸相を伝える一方で、奇怪さやひょうきんさなど、普段は見せない自己の発露 を楽しんでもいたようだ。 

(3月16日、テンポラリー・コンテンポラリー)