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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2006.03.10]

バレエ協会の『白鳥の湖』、スターダンサーズ・バレエ団の『ジゼル』

  2006年都民芸術フェスティバルに参加する、バレエ協会による『白鳥の湖』が上演された。今回は、下村由理恵/李波、島田衣子/斉藤拓、岩田唯起子/法 村圭緒のスリーキャストが組まれた。ヴァージョンはプティパ、イワノフの原振付を改訂したコンスタンチン・セルゲイエフ版を基本に、ドゥジンスカヤ、アン ナ=マリ・ホームズが手を加え、さらに今回のために橋浦勇が再改訂したもの。道化と家庭教師が登場し、王子の友人にはキャラクターが与えられていない演出 である。

初日を観たが、下村由理恵のオデット/オディールは手慣れた踊りでめりはりがはっきりしていて見やすい。第2幕では、魔術で白鳥にされている境遇から早 く人間に戻りたい、という気持ちが踊りによってくっきりと描かれている。オディールも感情の動きが明快に見える踊りだった。
ロートバルト、パ・ド・トロワもトリプルキャストが組まれていたが、私が観た日では、とりわけ西田佑子が光っていた。もっともっと踊ってもらいたいダンサーである。
(2月28日、東京文化会館)

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スターダンサーズ・バレエ団が、バーミンガム・ロイヤル・バレエのプリンシパル、佐久間奈緒とニューヨーク・シティ・バレエのプリンシパルだったロバー ト・テューズリーをゲストに迎えて、ピーター・ライト版の『ジゼル』を上演した。もともとこれはスターダンサーズ・バレエ団のレパートリーであるが、上演 のたびに振付家によって手が加えられている。

  特に演出的に関心させられるのは、第1幕終盤のジゼルの狂乱のシーンである。結婚を約束したロイスは実はアルブレヒト伯爵であり、貴族の婚約者がいたこと を知って絶望したジゼルの死に至るまでを、ピーター・ライトはごく自然にスムーズに展開する。母ベルタは椅子に掛けたまま、愛する娘ジゼルの死を見て茫然 自失、立ち上がることさえできず村人たちに支えられている。しかし、意を決して立ち上がると、ジゼルの蘇生を願って虚しく揺り動かしているアルブレヒトを はねのけ、悲嘆にくれる。そうした母親の行動により、アルブレヒトは一縷の希望も残されていない現実を知り、その場を立ち去らるのである。

ジゼル、アルブレヒト、ベルタあるいはヒラリオンのそれぞれの気持ちが過不足なく正確に捉えられており、それぞれがその距離を保ちながら演技している。そのために、緊張感のある見事な舞台が創られているのである。
佐久間のジゼルは、ケレン味なく正確で腕が素敵に美しい。クラシック・バレエの美をきちんと表現のできる好感のもてるダンサーである。テューズリーも感 情の高まりとジゼルへの深い愛を、よく表現して、最後の見せ場を見事に踊りきった。ピーター・ファーマーの美術も優れており、なかなか充実感のある舞台 だった。
(2月5日、ゆうぽうと簡易保険ホール)


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