ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2006.03.10]

バレエ・プレジョカージュの『Les 4 saisons...(四季)』

 一世を風靡したヌーヴェル・ダンスが霧散してしまった今、パリでもっとも有名なコンテンポラリー・ダンスの振付家は、アンジュラン・プレルジョカージュ だろう。パリ・オペラ座に『ル・パルク』を始めとして何作も振付けていて、その功績からだろうか、レジオン・ドヌール勲章まで貰っている。そのプレルジョ カージュが自身のカンパニーを率いて、新国立劇場で2作品を上演した。私は『Les 4 saisons…(四季)』(音楽/ヴィヴァルディ、演奏/ジュリア-ノ・カルミニョーラ)を観ることができた。

この作品は、現代フランスのコンテンポラリー・アーテスト、ファブリス・イベールとプレルジョカージュのコラボレーションである。イベールはこのダンス のために、美術・衣装を担当し、POFというオブジェを作った。これは、「機能する物体のプロトタイプ:日常生活から取り入れ、その本来の機能を変えられ た、現実には存在しない物体」と定義されている。

幕が開くと、天から様々のPOFが吊るされている。巨大な葡萄、椅子、スルメのように伸ばされたGパン、雲のような形の切り抜き、雪ダルマの頭くらいの大きなボール、テニスボールをつないだような真珠のネックレス、消防車のホ-スのみたいなロープなどなどである。
ブランケットで身体を覆ったダンサーたちがパラパラと登場。その下には何も付けていないが、舞台で踊るための最低限の衣装----タンクトップとショー ツを着けてと踊り始める。舞台には透明の熊の縫いぐるみやショッキング・グリーンの防護服を着た猿、天から小石が降ってきたり、吊るされていたロープが落 ちて来て縄跳びが始まったり、雌雄二体と思われるハリネズミなど、天衣無縫というか奇想天外、自由奔放に造型されたオブジェが次々と現れる。

ダンスの動きは生命の運動を表すような----人間のセックスとか、猿の好奇心、繊毛に身を包んだ動物の合体、競い合い、見栄の張り合いといったもで、 それらのオブジェとはどこかで通底している。そしてそこには不可思議な世界というか、現実を平行に次元を移動したような世界が現れ、生命の実体をカオスの 中に感じることができる。
イベールは<カオスグラフィー>とクレジットされているが、プレルジョカージュとともに、パリのエスプリを武器として生命のコアに迫ろうとするカオスを創った。
(2月4日、新国立劇場中劇場)


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