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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2006.03.10]

東京バレエ団がマラーホフ版『眠れる森の美女』を日本初演

 ベルリン国立バレエ団芸術監督のウラジーミル・マラーホフが自ら演出し、昨年10月に披露した『眠れる森の美女』が、東京バレエ団により日本初演され た。デジレ王子はもちろんマラーホフで、オーロラ姫は、この1月、ベルリンでこの役を踊ってきた東京バレエ団の吉岡美佳。マラーホフは、プティパの原典に 基づき、物語の骨格を受け継ぎながら、随所に独自色を打ち出していたが、総じてメルヘンの世界を強調していたように思う。

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幕が開くと、そこは咲き誇るバラの生垣で囲まれた庭園。時代や場所を特定せず、全幕通してバラの庭園という装置で一貫させた。プロローグでは、生垣の前に 吊るされたバラが絡まる七つの大きな球が半回転すると、中から妖精やカラボスが順次現われる趣向。オーロラが、糸紡ぎの針ではなく、バラの棘を刺して倒れ るように変えたことにより、バラに囲まれて育つオーロラは常に棘を刺す危険にさらされていることになる。大きな変更はほかに、狩りの場面や「パノラマ」を 省き、代わりに「パノラマ」の音楽を第一幕が始まる前に置き、幼いオーロラに呪いを掛けたバラを持って近づこうとするカラボスと、これを防ぐリラの精のや りとりを見せ、成長したオーロラの登場につなげたことだろうか。
デジレ王子は妖精が遊ぶ森に誘い込まれたように飛び込んできてリラの精に会い、オーロラの幻に魅了されて救出に向かう、と筋道はきちんと付ける。だが、婚礼の祝宴の最中に演奏を中断し、カラボスに舞台をねたましげに横切らせた意図は何か、謎を残した。

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マラーホフは、柔らかな跳躍で空中に美しく弧を描いて登場。妖精たちに囲まれて踊り、それに続くソロで、自分を引き付ける不可思議な力をいぶかる心の内 を、首を傾げ、腕や上体を宙に漂わせるように使って細やかに伝えた。グラン・パ・ド・ドゥも格調高く踊ったが、さりげないようでいて実に巧みに吉岡をサ ポートしたのには感心させられた。
吉岡は、ローズ・アダージョでは緊張のためか硬かったが、やがてしなやかさを取り戻し、安定した演技を見せた。最初に現われた時から既に成長した王女のよ うに見えたが、メルヘン調が強いこのプロダクションでは、やはり十六歳の初々しさを出して欲しかった。リラの精の上野水香は、技の見せ場はないものの、凛 とした態度と太陽の温かさでオーロラを守って好演。カラボスの芝岡紀斗は切れ味鋭い演技で舞台を引き締めた。ほかに、フロリナ姫の小出領子とシンデレラの 井脇幸江が華を添えた。
(2月18日・東京文化会館)


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