ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2005.08.10]

●Noism05のトリプルビルはシルヴェストリン、黒田育世、近藤良平

新潟市の「りゅーとぴあ」のレジデンシャル・カンパニーで金森穣が芸術監督を務める「Noism05」が、三人の振付家を招き新作のトリプルビルの公演を行った。 金森も他のダンサーとともに一人のダンサーとして踊り、新潟、大阪に続いて東京公演を行った。

最初は、イタリア出身でフランクフルト・バレエ団のフォーサイスの下などで踊り、最近は日本で作品を発表することの多い、アレッシオ・シルヴェストリンの『ドア.インドア』。

紗のかかった乳白色の霧におおわれたような舞台の下手奥に、幅広い帯状の布が天から垂れている。ラストではこの帯状の布に、ドアのような形状の入り口ができていた。 何か息を吸い込むような呼吸音とバルトークのオペラ『青ひげ公の城』の音楽、青ひげの城に囚われている女性のモノローグのようなナレーション……。 ダンスは一定のリズムを保ってずっと続けられて行く。今年2月に愛知芸術文化センターでアレッシオが創った、ダンスオペラ『青ひげ城の扉』から発想された作品であろう。 開幕から幕が降りるまで同じ調子で続けられたダンスは、音楽や美術あるいは時間や空間などと同等の芸術的な環境として考えられているかのよう。インスタレーションとも捉えられる舞台であった。

2曲目は黒田育世の『ラストパイ』。幕開きから、腹の底をつくような激しいリズムが響き、上手後方に舞台の天に接するような高い櫓を組み、そのてっぺんで松本じろがロック・ギターを演奏する。 櫓の下から下手の前方に向かって光の道が見える。その尖端では、金森が激しいダンスを終始踊っている。 櫓の下から光の道を踊る金森に向かって、その他のダンサーが反復運動をする、といったダンスだった。祭りの儀式の構造を解体して再構築した、といったような舞台である。

3曲目は、お馴染み「コンドルズ」の主宰者、近藤良平の『犬的人生』。幕の開く前から、「トリプルビル」ってなんだろう?といった近藤自身からのメッセージが流れる。 舞台の左右に、三本づつの柱が立っていて正面の背景のスクリーンに、まず、白い小さなボールが弾むアニメーションが映される。 実は、この白いボールと舞台上の柱(犬も歩けば棒に当たるの棒)への関心が、犬の人生を象徴しているのである。

ダンサー同士がちょっと照れ気味に向き合ったり、相手の動きをキョトンと眺めたり、集団の中の一匹だけが微妙にズレて動いたり、尻を上げ顔と肩から地べたにぺチャット休んだり、 相手にちょっと甘えて体のあずけたり、ちょこちょことした駆け寄り方、これらはみんな<犬ならではの動き>である。こうした、犬的な動きを集めて、ダンスとして立派に構成している。 見事! しかし、今、コンテンポラリー・ダンス界ナンバー1の売れっ子の近藤良平が、犬の動きをこんなにつぶさに観察していたとはまことにもって驚いた。多忙ゆえに「犬的人生」に憧れるのであろうか。
(7月28日、世田ヶ谷パブリックシアター)