ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2005.07.10]

●〈第44回新鋭・中堅舞踊家による現代舞踊公演〉

新鋭と中堅の作品を一挙に紹介する、現代舞踊協会恒例の行事。第44回を迎えた今年は、二十二作品が二夜に分けて上演された。その二日目を観た。

小林容子の『BOX―khaosへの祈り』は、白い箱を開けたことでもたらされた混乱と悲劇を描いたようだが、箱が象徴するものが今一つ鮮明に伝わらない。 花の冠を乗せた白い衣装の娘と、後半をリードする黒い衣装の女の扱いに、もう一工夫あればと思った。『乾いた地』は小田みさえと中村信夫の共同制作。 掌を広げ、腕や脚を振り上げ、回転し、引き合い、ダイナミックに踊るが、どこか隙間を埋め切れない男女の姿が感じられた。 ニシムラヤスコの『時間はすべてに舞い降りる』は、四人のダンサーが降り注がれる音に反応するように様々な動きを見せたが、「きよしこの夜」や英語ニュース、 振り子やサイレンの音など、雑多すぎる音のため求心力が弱まってしまい、作者の意図がつかみきれなかった。

渡辺麻子の『ありふれた日常―私の部屋』は、白いランタンを上手く生かした佳作。照明が点滅するたびに、三人の“私”がランタンのそばで座ったり、寝そ べったり、ポーズを替える。 次はランタンを抱え、引きずり、縦や横と様々に並べ変えて、たわむれる。それだけなのだが、冴えた構成が印象に残った。『Flightless birds―空への憧憬―』は、振付者のさとうみどりが古木竜太と組んで踊った。男は後の壁に突き進み、舞台から落ちるなど大きく動くが、女は小規模な動 きと対照的。 ただ、飛ぶことへの憧れや希求は、真に迫ってはこなかった。肥後宣子の『EXIT いくつの道を歩いたら……』は、闇に立つ女が、ここでないどこかを求め てもがくが、 果たせずに悄然と佇む様を描いたのだろうか。五人のダンサーの掛け合いをもっと練り上げれば、作品の奥行きも増すと思う。

稲葉厚子の『鳥よ!!-融和-』では、黒い衣装の女性ダンサーたちが、太鼓を叩いて歌う男の登場を境に、一人を残して白い衣装に着替え、腕を鳥の羽根のようにうねらせ、白い布を波のように頭上に掲げる。 絵画的な情景は見られたものの、彼女たちの間を縫うように歩く黒い衣装のままの女との係わりが描ききれていなかったようだ。 熊澤純子・美子による『ブーツを脱いで……(平和への祈り)』は、暗示されたテロに立ち向かう五人の女性ダンサーを描いたインパクトのある作品。 こぶしをかざし、脚を振り上げ、急回転し、床に倒れ、立ち上がる。戦闘的な一人が他の四人に制されてブーツを脱ぐが、その心の推移をもっと丹念に描き込めば、訴える力も強まったろう。 『魂の赤い花』は立石美智子のソロ。ロングドレスで床に座る立石が、スカートを頭から被ったり、寝転んで脚を上げたり、四つん這いになったりするが、動きの語彙が限られており、全体に抽象的すぎたようだ。

山下美代子の『HOLE~それは小さな穴からはじまった~』は、四人のダンサーが円筒の中心=穴をのぞくシーンで始まる。 円筒を担いだり、平らに広げて、その上に寝転んだり、縦に四本つないだりと、色々に遊ぶ。 突然、背後の幕が開き、ソプラノ歌手がピアノの伴奏で歌い始めるのだが、その落差があまりに大きく、違和感を覚えた。 洒落た遊戯感覚を持っているのだから、それで押し通して欲しかった。締めくくりは、内田香の『Rose Rose』。床に敷かれた赤い花びらや、舞い落ちる赤い花びらの中で、赤い衣装の男女が流れるように力強く踊り、また静止しては動く。 絵画的な雰囲気のある作品で、女が一人、床に手がつくまでブリッジの形で背を反らせていく姿が残像を結んだ。

十一作品はそれぞれに個性的。上演時間十分という枠の中でも、テーマの設定や展開次第で、充実した成果を上げられることを実感した。 また、参加した振付家とダンサーの大半が女性だったことに、改めて驚かされた。
(6月10日、東京芸術劇場中ホール)