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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2005.06.10]

●ミチオ イトウ同門会が『鷹の井戸』を上演

1910年代から60年まで、ドイツからロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルス、東京と、日本人の舞踊家として世界に先駆けて活躍した伊藤道郎。61年、東京オリンピックの開・閉会式の演出を果たせぬまま亡くなった、伊藤道郎の門下生たちが結成したミチオ イトウ同門会も、今年で40周年を迎えた。その節目を記した公演では、伊藤道郎の名を世界に高めた伝説的作品『鷹の井戸』が上演された。

『鷹の井戸』は、アイルランドの詩人イエーツ、アメリカの詩人・評論家エズラ・パウンド、伊藤道郎、画家で音楽も詳しかったエドマンド・デュラックなどの 共同作業によって創られた。ケルト神話と能を融合させた「舞踊詩劇」といった趣きの舞台で、当時の英国の芸術家たちの間でたいへんな評判となった。伊藤道 郎はこの作品を、日本に一時帰国した際も含めて何回か上演している。

 今回は、伊藤門下の龍谷久男の構成、井村恭子の振付により、<ミチオ望見>というサブタイトルが付されて上演された。
永遠の生命を得ることのできる井戸の水をめぐって、その水を求めて50年も待っている老人と井戸守りの少女(鷹の精)、やはり永遠の水を求めてたどり着 いた若者のドラマ。これを仮面や語り手、朗唱、ドラを鳴らす者などを使って、能の形式に倣って演じる舞台である。今回の上演を観て、特に「鷹の踊り」のと ころなどでは、ケルト神話の不可思議な魅力が、生命の神秘を呼び起こしたかのような印象を受けた。なかなか得ることのできない貴重な舞台体験であった。

また、『テン ジェスチャア』『ノクターン』『ケークウォーク』『ピチカット』『悲愴』第一楽章、『アヴェ・マリア』ほか計13曲が、井村恭子の構成に より復刻上演された。アンナ・パヴロワも賞賛したという『ピチカット』は、背景に映した自身の巨大な影とともに踊るのだが、足は舞台に据えたままで一歩も 動かさない。非常に独創的で、強烈な印象を残す作品である。『悲愴』は黒い衣裳で顔だけが白く見えるの女性の群舞が、整然としたり、ランダムに並んだリ、 崩れたり、雲の動きを速回しでみているような、フラクタルな感覚を感じさせるフォーメーションだった。

『ピチカット』

その他にも新人や同人の作品が上演された。井村恭子の白い衣裳の四人のダンサーが情感豊かに踊った『今在りて』。今年亡くなった古荘妙子の、10名の尼僧と一人の神父が踊る『スラヴァのアヴェ・マリア』などが印象に残った。
伊藤道郎という偉大な先達の、想像を越えるような才能を「望見」することができた、素敵な公演であった。

『テン ジェスチァ』
 

『悲愴』

『今在りて』

(5月22日、メルパルクホール)