ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2005.05.10]

●木佐貫、上島、二見、近藤作品も踊られた小川亜矢子の「All or Nothing 」

 昨年秋に『運命に従う』という自伝的エッセイ集を刊行した小川亜矢子。彼女が主宰する青山ダンシング・スクエアが「All or Nothing 流れのままに」という公演を行った。
小川亜矢子が今までに振付けた作品が6作、二見一幸、上島雪夫&新上祐也、近藤良平、木佐貫邦子がそれぞれの振付作品を上演した。
小川作品は、トゥシューズを履きクラシック・バレエのテクニックを使っている。アンサンブルを主体としたシンフォニックな作品と、心理描写によるドラマティックな作品が踊られた。

冒頭は『クリスタル・パルティータ』。J.S.バッハの「パルティータ」を使い、9名バレリーナが淡いパープルの総タイツを着け、左手首に同じ色の小さな布を着けて踊った。 菩薩のポーズを採り入れたスタッカートな動きを速いテンポで展開し、ソロ、トロワなどきれいな流れで構成されていた。御堂の中の菩薩たちをイメージして創られた作品である。 『五重奏によるパ・ド・サンク』はシューマンの「ピアノ五重奏」から。5人のダンサーが淡いパステルカラーの色とりどりの薄物を纏って、ピルエットを多用した軽快なムーヴメントを踊った。 ラストは、ショパンの「華麗なる大円舞曲」他による『野火』。新芽をだすために火を放った草原、新しい誕生を描いたリズミカルな構成のダンス。 小川亜矢子全147作の最初の作品として35年前に創られたものである。

『サロメ』


『裏切り』
  ドラマティックな作品は『裏切り----The Door』。孤独な黒い衣裳の女の部屋のドアを激しく叩く音から始まる。男がドアから入ってきて葛藤が生れ、もう一人赤い衣裳の女が入ってきて‥‥。 チューダーばりの心理描写とミステリーのような雰囲気もある作品。音楽はブラームスの「弦楽四重奏曲」から、藤堂眞子が黒い衣裳の女を踊った。 『沙絽女(さろめ)』は、まず輝く満月を背景に、そして深紅に染まった月を背景に踊るソロ。月は、よかなあんの首を載せる皿のようである。 音楽はドヴュッシーの「弦楽四重奏」。『ある結婚の風景』は、赤い糸で繋がれた夫婦が陥る陥穽を描いたパ・ド・ドゥ。アレンスキーの「ピアノ三重奏」を 使って、井神さゆりと坂本登喜彦が踊った。 小川亜矢子の音楽とダンスのセンスの良さが際立ち、ロマンティックな香りのあるテーマが魅力を放つ舞台だった。

 そして近藤良平振付の『晴れて不合格』がおもしろかった。ピアニカを持った「近藤先生」と落ちこぼれスクールガールのダンスである。 スクールガール・ダンスはとりたてて珍しくはないが、不合格組のスクールガールばかりのダンスは初めて観た。 <群れと行動>がテーマというが、恐らく、振付家のコンプレックスによって負け組の女の子を捉えている、と思われて興味深かかった。車に轢かれたカエルのバラードが可愛らしかった。

二見一幸はバッハを使った『BWV』で白い清潔な衣裳のダンサーを駆使して滑らかなタッチのダンス。上島雪夫&新上裕也は『…INTO THE BLUE』。 スモークをたいて濃いブルーの衣裳を着けた男女の群舞を中心に構成した作品。小川が主宰した「スタジオ一番街」へのオマージュと新たな誕生をイメージさせ るダンスだった。 木佐貫邦子は『K3MN@』。ミニマルミュージックを使い今日風な衣裳を着けた4人のダンサーによるコンテンポラリーな感覚のダンスである。 木佐貫自身と加賀谷香、二見一幸、平山素子(23日は木下菜律子)が見応えのある舞台を見せた。

(4月24日、世田谷パブリックシアター)

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