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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2005.03.10]

●谷バレエ団の『ジゼル』、NBAバレエ団の『コッペリア』

 谷桃子バレエ団が『ジゼル』全幕と「バレエ・コンサート」を上演した。 「バレエ・コンサート」には、『リゼット』(「ラ・フィーユ・マル・ガルデ」)よりグラン・パ・ド・ドゥ、『グラン・パ・クラシック』『海賊』よりグラン・パ・ド・ドゥ(奴隷の踊り)が演目としてとりあげられていた。

『リゼット』は、周知のように1789年にボルドーのオペラ座で初演され、今日でも上演され続けている最も古いバレエといわれている。 谷バレエは、初演の後、ロシアで改訂されて伝えられるゴルスキー版に基づいて上演している。私が観た日は、瀬田統子と中武啓吾がなかなか雰囲気のある踊りを見せた。
『グラン・パ・クラシック』はオベール音楽、グゾフスキー振付。1949年のパリの初演ではイヴット・ショヴィレが踊り、ガラ・コンサートではお馴染みの作品となっている。 佐々木和葉と梶原将仁が明るく華やかな舞台を見せた。

『海賊』のグランパ・ド・ドゥは、一幕の「奴隷の踊り」。買い手の金持ちに、奴隷商人と女奴隷が踊ってアピールするシーンのパ・ド・ドゥである。 高部尚子のテクニックと松島勇気の活力のある見応えある踊りだった。

『ジゼル』は谷桃子が引退公演に選んだ演目である。谷バレエ団にとって『ジゼル』がどれだけ大切なバレエであるか、は山野博大氏がプログラムに縷々書かれている。 再演出・振付は谷桃子だが、レニングラード版に基づくと記されている。
とりわけ第二幕は、谷バレエ団独特のほんのりとしたロマンティックな雰囲気がある。海外のバレエ団の舞台からは感じられないものである。 『ロマンティック組曲』や『白鳥の湖』からも感じられるが、日本人の女性ならではの濃やかな優雅さを舞台に映している。 永橋あゆみのジゼルと今井智也のアルブレヒト、というフレッシュなコンビの好感のもてる公演であった。
(1月28日、文化会館)
「海賊」
「ジゼル」
「ジゼル」

 NBAバレエ団が上演した『コッペリア』は、セルゲイ・ヴィハレフがハーバート大学に保存されていたマリウス・プティパ版を舞踊譜に基づいて復元したものである。 この復元版は、2001年にロシアのノボシビルスク・バレエで初演され、日本でも上演されている。その初演の際に、復元したヴィハレフ自身が「原典の復元」という一文を寄せており、 それがNBAバレエ団のプログラムに転載されている。これが非常におもしろい。むろん、彼はクラシック・バレエの原典を復元することの意義----作者が最初に思い付いた振付や構成を尊重すること----を書いている。 そして経緯として、波乱に富んだプティパ版の舞踊譜がハーバート大学のコレクションに収まるまでの「運命」を説明している。

そこには、バレエの原典に対して、舞踊史上に名を残す人たちがどのような態度をとったかが、自ずと示されているのである。

 NBAバレエ団の舞台は、第一幕はコール・ドが次々と登場し、華やかに民族色豊かなダンスを賑やかに繰り広げる。 一転して第二幕は、スリリングな緊張感のあるシーンでソロとマイムで構成されている。第三幕では、ソロや「時の踊り」「仕事の踊り」「結婚の踊り」などのディヴェルティスマンが次々と踊られる。 スワニルダはベラルーシのバレエ学校に学んだ田熊弓子、フランツはボリショイ・バレエ学校出身のセルゲイ・サボチェンコ。素朴な村人たちの祭りの雰囲気を醸しだす素敵な踊りだった。
(1月29日、メルパルクホール)