ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2005.02.10]
今月は全幕物のバレエ公演が たくさんありました。クラシック・バレエは、オペラなどの他の舞台芸術と同じように、『白鳥の湖』や『ジゼル』などの同じ作品を何度も繰り返して観ても充 分に楽しむことができます。ストーリーの展開はほぼ同じなのに、ダンサーの踊りの特徴やオーケストラの音色、演出・振付の改訂あるいは会場や観客の雰囲気 まで含めて、観る時々によって、まったく違った感情の体験を味わわせてくれるからです。 今月もそんなクラシック・バレエの恩恵を目一杯に受けることができました。

●コレーラ&マーフィーが牧阿佐美バレエ団と共演

 05年は、アメリカン・バレエ・シアター(ABT)のスターダンサー、アンヘル・コレーラ&ジリアン・マーフィーと牧阿佐美バレエ団の共演による『白鳥の湖』で幕を開けた。

牧阿佐美バレエ団のレパートリーとなっている『白鳥の湖』は、テリー・ウエストモーランド版である。決してアップテンポな舞台ではないが、ドラマ性を尊重し非常に丁寧に創られている。要所に配されたマイムも古典的な典雅な雰囲気を醸している。

特に、白鳥から美しい女性に変身したオデットとジークフリート王子が出会うシーンでは、王子が電流に撃たれたようにオデットに魅せられる気持が鮮烈に描 かれている。ともすれば、華やかな振りや美しいメロディの中に忘れられがちなドラマティックな感情表現を、明確に訴える演出である。コレーラもまた演出を 心得た見事なダンスと演技であった。また、第1幕のコール・ド・バレエのフォーメーションは美しく、第2幕と第4幕のイワノフの振付ともよくマッチして、 この悲劇を盛り上げ、アポテオーズに到るまでなかなかきれいな流れを創っていた。

マーフィーも美しい身体を活かした見事な踊りだったが、元気が良すぎて出の勢いが余るような場面も見うけられた。パ・ド・トロワを踊った逸見智彦はプロ ポーションはコレーラに優るとも劣らない、もっと思い切って自分の表現をしてもらいたい。王子の家庭教師に扮した小嶋直也が、自身の新しい面を開発しよう と試みているのが目をひいた。
(1月6日、東京文化会館)