ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2005.02.10]

●東京文化会館のニューイヤーガラコンサート

  ニューイヤーコンサートの定番メニューといえばウィンナ・ワルツにオペレッタのアリアだろうが、東京文化会館は、オペラやバレエ、それにコンサートも開け る同館ならではの公演を行った。前半は井上道義指揮の都響による演奏で、後半は東京バレエ団が彼らの演奏でベジャール作品を踊る構成で、オーケストラ舞台 からバレエ舞台への転換も見せるという前代未門の企画。20世紀の「パリ」に関連し、当時は斬新すぎてスキャンダルを生んだ音楽を選曲したそうだが、今や “20世紀の古典”であることを改めて実感させた。

最初は、コクトーの台本にサティが作曲したバレエ曲『パラード』(見世物小屋)。サイレンやピストルの音も混じる音楽は、ピカソの大胆な美術でロシアバ レエ団が初演した当時は、さぞ奇抜に響いただろう。今回は、奏者に水槽の水を足でパチャパチャさせたり、音階順に吊り下げたガラス瓶を叩かせるなどの演出 はあったが、井上は手堅く都響をまとめていた。ハワイアンギターが入る小編成のショスタコービチの『ジャズ・バンドのための組曲第一番』は、真紅の幕の 前、すなわちオケ・ピットに当たる部分で演奏された。

  後半の一曲目はストラヴィンスキーによるバレエ音楽の傑作『春の祭典』。ベジャールの振付は生と性の目覚めを生々しく描いて衝撃的だが、今回は男性群舞に 野性味の発散がやや希薄で、女性群舞は美しいまでに整っていた。締めくくりはラヴェルの同名の管弦楽曲による『ボレロ』。この日は人気抜群の上野水香が日 本では初めて「メロディ」のソロを踊り、男性が「リズム」の群舞を務めた。最初のうち、上野は淡々と振りをなぞる感じだったが、身体を柔らかくしなわせ、 思いきり脚を振り上げ、鋭いジャンプもこなし、音楽の高揚と共に内から沸き上がるようなエネルギーを放出させていった。実にみずみずしい演技だったが、い わばまだ“教科書通り”。この先、作品をどう極めていくか、楽しみだ。

東京バレエ団が生の演奏で踊った『春の祭典』『ボレロ』というと、2003年の、バレンボイム指揮シカゴ響との手合わせを思い出す。オペラでは歌手の息 遣いに合わせて共に音楽を紡いでいくバレンボイムだが、この時は音楽に主導権を持たせてオーケストラを駆り立てた観があった。それに比べて井上は、ダン サーの呼吸にも配慮し、バレエに寄り添うように、複雑なリズムをわかりやすく演奏していた。
(1月3日、東京文化会館)