ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2004.12.10]

●上海歌舞団が来日

上 海歌舞団が、第11回神奈川国際芸術フェスティバルのコンテンポラリー・アーツ・シリーズの企画で来日した。3本の委嘱作が初演され、その中に“異文化交 流”をうたった近藤良平の新作も含まれてはいたが、民族的な舞踊や音楽、舞踏劇の創作を目的に、1979年設立された同団の参加は、従来のコンテンポラ リー・ダンスの路線とは趣きを異にしている。それでも、夏のアテネ・オリンピックの閉会式で華麗な舞踊を披露した芸術監督の黄豆豆を始めとする若いダン サーたちによる熱気に溢れた舞台は見応えがあった。

幕開けの『秦俑魂』は、陳維亜が秦の始皇帝陵の兵馬俑に着想を得、兵士の勇姿を描いた作品。ソロを踊った黄や群舞の男性ダンサーは、アクロバティックな 技が盛り込まれた舞踊を整然とこなした。あらゆる役を演じる伝統劇役者の一生を綴った女性ソロ『旦角』や、女性たちが華麗に剣を操って舞う『剣似飛鳳』に も、中国の伝統が色濃く感じられた。

 黄の代表作『棋』は、碁石を象徴する白い衣装の陣営と黒い衣装の陣営による迫真の競い合いを模したもので、『甲骨随想』は古代の甲骨文字の美を身体で表すソロ作品。黄は自ら後者を踊り、驚異的な跳躍、弓のようにしなう上半身、鋭敏な手足の動きで圧倒した。
委嘱作のうち、日本在住の顔安による『上善如水』は、老子の言葉を元に、柔軟で謙虚だが力のある水の如く生きる女性の方が、力で支配せんとする男性に優 ると訴える。男が女を引きずり回したり、もがき合ったかと思うと抱きついたりと、現代の男女を彷彿させるデュオだった。近藤良平の『腹が減った!とにかく 腹が減った!』は、歩み出てきた一人の男が「オスッ!」と敬礼して始まる。横一列に並んだ男たちが隣の人の腹をリレー式に手で叩いたり、握手すると思わせ てすれ違ったり、差し出したりんごを相手がかじろうとした瞬間に引っ込めて自分でかじったり。可笑しくも他愛ない作品と言ってしまえばそれまでだが、ダン サーは近藤の独特の振りに、初めてとは思えないほど柔軟に応じていた。

黄の新作『黄土地』は、中国人の心の故郷という黄土への愛着をテーマにした骨太の作品。統制の取れた、たくましい男性群舞は、規律ある暮らしのイメージ か。男たちは箱から現れた若い女に魅せられ、街や海原など未知の世界へと導かれるが、女を連れ帰って箱に封じ、その周りで歓喜したように踊る。譚盾の伝統 楽器を用いた音楽が生きていた。

『黄土地』

ダンサーにはバレエの技術も学ばせ、作舞には京劇や雑技の伝統のほか、西洋の技法や表現も採り入れるーーこうした歌舞団の姿勢は、2000年に黄が23歳で芸術監督に迎えられてから一層強まったと聞くだけに、今後が楽しみだ。


『黄土地』
(11月21日、神奈川県民ホール)