ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2004.06.10]

●伊藤キムの新作『花の歴史』『Close the door,open your mouth』

 新国立劇場のコンテンポ ラリー・ダンス・シリーズは、伊藤キムの新作『花の歴史』と『Close the door, open your mouth』の再演。ダンサーがカウンターテナーの技を披露して観客を「あっ」と言わせた、『Close the door, open your mouth』の初演は2001年のことだった。本当に時が経つのは早いもの、というのは余計な感想だが、やはり、カウンターテナーをダンスの舞台に使うと いうことは卓越した発想だろう。身体(ダンス)と言葉と音楽と歌、というジャンルについて感じ、想い、体験して、表現することをトータルにしかも楽しく考 えてしまう舞台が、いったいほかにあるだろうか。これはダンスを越えた、しかしダンスの傑作である。

キムは『花の歴史』のプログラムに、<強いのか弱いのか、繊細なのか図太いのか、穢れているのかそうでないのか、理解不能で捕えどころがない。女という 生き物、不思議で不気味>と書いている。舞踏からダンスの世界に入ったキムにとって、「トウシューズを使ったバレエの動き」は、女性そのものを連想させる のだろうか。この作品では、黒田育世を始めとする4人のトウシューズを付けたバレエダンサーが、伊藤キム独特の動きを踊る。それは、キムの目から見た女性 の得たいの知れない特性-----理解したと思うとすぐに覆されてしまうような---を表す踊りである。そして女性ダンサーたちを、中央のベジャールの 『ボレロ』の時のような丸いテーブルで踊らせる。その回りを、すっかり浮き世ばなれしてしまった大先輩の女性たちが、「春の小川」に合わせてお遊戯しなが らゆっくりと回る。確かに、舞台には<花の歴史>ともいうべき、女性たちの時間が流れていた。(5月15日、新国立劇場)