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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2015.03.10]

1986年から始まった青山バレエフェスティバルの「LAST SHOW」が華やかに幕を下ろした

AOYAMA BALLET FESTIVAL〜LAST SHOW〜
こどもの城 青山劇場 牧阿佐美:芸術監督

1986年8月16日に第1回青山バレエフェスティバルが開催され、2000年で15回を数えた。その後は1989年1月にローザンヌ国際バレエコンクール東京開催に続いて、ローザンヌ・ガラ公演が開催されるようになり、2013年までに4回開催された。そしてこどもの城 青山劇場の閉館が決まり、ついに今年「LAST SHOW」を迎えることとなった。牧阿佐美は第1回から全部で5回も青山バレエフェスティバルの芸術監督を務め、LAST SHOWの今回が6回目となる。公演プログラムの巻末には、15回の公演リストが掲載されていて、それぞれの年の「青山フェス」の出演者を懐かしく眺めることができた。これもまた、齢を重ねなければ味わえない楽しみではある。

tokyo1503d_01.jpg 「組曲PQ」
撮影/瀬戸秀美(すべて)

さて、今回のプログラムはACT1とACT2に分けられ、それぞれ5演目と6演目が踊られた。
開幕は男性ダンサー12人が踊る矢上恵子振付の『組曲PQ』。ミンクスの音楽に乗せて踊るダンサーたちは、白い薄ものを纏い、白塗りで髪を頬のあたりでカールさせる(キトリのヘアスタイル)などなかなかユニークな雰囲気。後半は椅子を使った踊りだった。ユーモラスな動きとミンクスの曲がよくマッチしていておもしろかった。関西出身で現在活躍している男性ダンサーが大挙して出演して舞台は活気があった。
続いて『ダイアナとアクティオン』(アグリッピーナ・ワガノワ:振付、リカルド・ドリゴ:音楽)のグラン・パ・ド・ドゥ。AMスチューデンツの栗原ゆうと牧阿佐美バレヱ団の中家正博が踊った。昨年の全日本バレエコンクール、ジャパンダンスコンペティションで第1位を受賞した栗原ゆうの柔らかくソフトな踊りが目を惹いた。中家正博の力感のある踊りと好対照でバランスがとれて魅了された。
行友裕子と堀内充は堀内充振付の『Flower song』で音楽はジョルジュ・ビゼー。白いドレス風の衣装でブランコにのって登場した行友裕子と黒い衣装でシャープなピルエットをみせる堀内充のダンス。行友裕子のゆったりした女性的な動きと、独楽のようにスピード感のある堀内充のアンサンブルがなかなか良かった。
西島数博振付の『シェへラザード』は酒井はなと西島数博が踊った。N.リムスキー=コルサコフの著名なメロディの哀切な響きをデュエットの動きの中に写した。
『ソネット』は佐多達枝の振付。デイヴィッド・ラングのミニマルな曲を使っている。速いテンポで比較的小さな動きを短いシーケンスで積み重ね、ソネットの詩の形が持つリズムをダンスの中に現した。高部尚子、足川欽也、坂本登喜彦というヴェテランの部に入れられるかもしれないトリオだったが、細かい速く変化する複雑な動きをしっかりと踊りきった。

tokyo1503d_03.jpg 「ダイアナとアクティオン」栗原ゆう、中家正博 tokyo1503d_04.jpg 「ダイアナとアクティオン」栗原ゆう、中家正博
tokyo1503d_05.jpg 「Flower song」行友裕子、堀内充 tokyo1503d_06.jpg 「Flower song」行友裕子、堀内充
tokyo1503d_02.jpg 「組曲PQ」 tokyo1503d_08.jpg 「ソネット」坂本登喜彦、足川欽也、高部尚子
tokyo1503d_07.jpg 「シェヘラザード」酒井はな、西島数博
tokyo1503d_10.jpg 「ライモンダ」西田佑子

第2部は西島数博振付の『ライモンダ』第3幕のグラン・パ・ド・ドゥ。音楽はアレクサンドル・グラズノフ。西田佑子と横関雄一郎がプリンシパルを踊った。西田佑子の明るい輝く雰囲気は素晴らしい。西田は表現も表情も豊かではっきり明快にみせる安定した踊りで、存在感もくっきりと舞台に表れた。ライモンダという役どころを正しくわきまえた魅力溢れる踊りだった。
続いて小尻健太が振付けた『not Yet』、音楽はフェリックス・ライコ。渡辺レイとのデュエットだった。冒頭にひとつの黒い風船を飛ばし、ラストでは自分で風船を膨らませて終わる。その間に渡辺レイと踊る。小尻健太はさすがに身体の柔軟性を生かした素速い動き。渡辺レイもそれに応えるシャープな身のこなしで見応えがあった。
次は『Mopey』。マルコ・ゲッケ振付作品で、近年は酒井はなのレパートリーとなっており、しばしば踊られている。運動神経に優れた酒井はなに適した動きに見える。速い小さな動きを加速させ、舞台上に独特のラインを描いた。
キミホ・ハルバートの『MANON』より最終幕のパ・ド・ドゥは、振付家自身と佐藤洋介が踊った。全幕初演時のオリジナル キャストだ。裸足のマノン、とも呼びたいような痛切な踊り。この後、デ・グリューには自身の生から思いもおよばなかった幻影に襲われるのだが、ここではひたすら、マノンの命を繋ぎ留めようと奮闘する。凄絶な生の残り火が燃え上がるパ・ド・ドゥである。
『Under the marron tree』は金森穣の演出・振付による井関佐和子のソロ。音楽はグスタフ・マーラー。公私ともにパートナーである、井関佐和子の優れたダンサーとしての表現力を熟知した、動きの見事な構成である。マーラーの音楽の決して取り返すことのできない故に美しい、喪失感を描いた。
ラストは篠原聖一振付の『ロミオとジュリエット』バルコニーのシーンのパ・ド・ドゥ。下村由利恵と佐々木大が踊った。冒頭はロミオがジュリエットの部屋の下で、彼女の姿を一目だけでも見ようとさ迷っている。すると期待に違わずジュリエットが現れ、やっと二人きりになれた喜びを踊り始める。最後は、ジュリエットが初めて口づけを許したロミオがマントを纏って去っていく。それをジュリエットがじっと見送る、という構成だった。初々しい愛の喜び適切に表した振付だった。
(2015年1月30日 青山劇場)

tokyo1503d_11.jpg 「ライモンダ」横関雄一郎 tokyo1503d_13.jpg 「Mopey」酒井はな tokyo1503d_16.jpg 「Under the marron tree」井関佐和子
tokyo1503d_14.jpg 「MANON」
キミホ・ハルバート、佐藤洋介
tokyo1503d_15.jpg 「MANON」
キミホ・ハルバート、佐藤洋介
tokyo1503d_17.jpg 「ロミオとジュリエット」
下村由理恵、佐々木大
tokyo1503d_09.jpg 「ライモンダ」西田佑子、横関雄一郎 tokyo1503d_12.jpg 「not Yet」渡辺レイ、小尻健太
tokyo1503d_18.jpg <LAST SHOW>フィナーレ
撮影/瀬戸秀美(すべて)