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三光 洋 Text by Hiroshi Sanko 
[2017.04.10]

オニール 八菜とエレオノーラ・アバニャートがタイターニアを競演したバランシンの『真夏の夜の夢』

Ballet de l’Opéra national de Paris パリ・オペラ座バレエ団
“LE SONGE D’UNE NUIT D’ETE “ George BALANCHINE
『真夏の夜の夢』ジョージ・バランシン:振付

『真夏の夜の夢』は、1962年にジョージ・バランシン(1904・1983)がニューヨーク・シティ・バレエ団のために振付けた。その初演から実に55年後になって、この3月にパリ・オペラ座バレエ団のレパートリーに入った。これは今年度のプログラムを作ったバンジャマン・ミルピエ前バレエ監督の意向による。
バランシンというと『シンフォニー・イン・C』や『水晶宮』、2017・18シーズンの開幕公演となる『ジュエルズ』といった筋のない抽象的な作品がすぐ頭に思い浮かぶが、『真夏の夜の夢』は彼が幼年時代から親しんでいたシェイクスピアの世界を前半の第1幕にまとめ、第2幕はアテネのシーシアス公爵の館での婚礼のバレードとディヴェルティスマンとなっている。そのために、第1幕が70分かかるのに対し、第2幕は35分で終わる。
レパートリー入り公演のために新たに作成されたクリスチャン・ラクロワの華やかな衣装と装置が、人間世界と妖精の世界が交錯する幻想的な舞台の書割となった。ただし衣装は、バレエ・リュスのデザイナーとして活躍したカリンスカのデザインを再現したものである。

pari1704a_01.jpg (C) Opéra national de Paris / Agathe Poupeney pari1704a_02.jpg (C) Opéra national de Paris / Agathe Poupeney
pari1704a_03.jpg (C) Opéra national de Paris / Agathe Poupeney pari1704a_04.jpg (C) Opéra national de Paris / Agathe Poupeney
pari1704a_25.jpg オニール 八菜
(C) Opéra national de Paris / Agathe Poupeney

最初に見ることができた3月12日のマチネでは、オニール 八菜がオベロン役のファビアン・レヴィヨンを相手に妖精の女王タイターニアを演じた。伸びやかな身体、女王にふさわしい気品があり、中央奥に置かれた貝殻に腰を掛けた姿はボッティチェリの絵画を思わせた。登場人物の心理を映し出す鏡としての表情や視線によりいっそうのパレットが広がれば、抗いがたい魅力を持ったヒロインとなるだろう。タイターニアの騎士役のカール・パケットとの息の合ったデュオもあったが、ちょっと短いのが残念だった。一方、14日に見たエレオノーラ・アバニャートのタイターニアは、ちょっとした指の動きやまなざしに零れるような官能性が漂っていた。
シェイクスピアの芝居から想像していたのとちょっと違っていたのは、貴族の婚礼で演じる芝居の練習のために森に来ていた職人たちによる劇中劇が形だけで、しごくあっさりと終わってしまったことだろう。第1幕で活躍が目立ったのはアントワーヌ・キルシャーとユゴー・ヴィオレッティが演じたいたずらな妖精パックで、いずれもコミカルな演技を愛嬌たっぷりに見せて観客から喝采されていた。貴族の女性ハーミア役で、ちょっと寂しげな表情が垣間見られるレティシア・プジョルと闊達な明るさを基調にしたミュリエル・ジュスペルギとの間に、ダンサーの個性の違いが見られたのも興味深かった。

pari1704a_26.jpg (C) Opéra national de Paris / Agathe Poupeney pari1704a_27.jpg (C) Opéra national de Paris / Agathe Poupeney
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バランシンはメンデルスゾーンの流麗な音楽を愛好し、1952年に『スコッチ・シンフォニー』を振付けているが、ここでは有名な『真夏の夜の夢』序曲(1829年)と同舞台伴奏音楽(1843年)を使った。ただし両方合わせても50分にしかならないため、メンデルスゾーンの他の曲が適宜選択されている。オーケストラピットにパリ・オペラ座管弦楽団が入る贅沢な公演だったが、高水準のオーケストラだけに、サイモン・ヘーヴェットの指揮にあと一歩の余情、詩情があったら、申し分なかったろう。
『ジュエルズ』のような、一目見てこれこそバランシンという鮮やかな振付作品とは一味違うものの、きれいな音楽と舞台によるエンターテインメントを家族連れの目立った観客たちが楽しんでいた。
(2017年3月12日マチネ、14日 バスチーユ・オペラ)

pari1704a_15.jpg (C) Opéra national de Paris / Agathe Poupeney pari1704a_10.jpg (C) Opéra national de Paris / Agathe Poupeney pari1704a_20.jpg (C) Opéra national de Paris / Agathe Poupeney
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『真夏の夜の夢』シェイクスピア原作 二幕バレエ レパ-トリー入り
振付 ジョージ・バランシン(1962年)
1962年 ニューヨーク・シティ・センターでNYCBにより初演
公演指導 サンドラ・ジェニングズ
音楽 メンデルスゾーン『真夏の夜の夢』(序曲 作品21、1826年、舞台音楽 作品61、1843年、 『アタリ―』序曲 作品74、1845年、『麗しきメリュジーヌ』作品32、1833年、『ヴァルプルギスの夜』作品60、1832年、『弦楽のためのシンフォニア第9番』1823年、『故郷への帰還』序曲、作品89、1829年
衣装・装置 クリスチャン・ラクロワ(衣装はバーバラ・カリンスカのオリジナル図案による)
照明 ジェニファー・ティプトン
サイモン・ヒューイット指揮 パリ・オペラ管弦楽団・合唱団
合唱指揮 ジョゼ=ルイ・バッソ
声楽ソリスト ブランヴェラ・レーネルト、アンヌ=ソフィー・デュクレ

配役(3月12日マチネ/14日)
タイターニア オニール 八菜/エレオノーラ・アバニャート
オベロン ファビアン・レヴィヨン/ポール・マルク
パック アントワーヌ・キルシャー/ユゴー・ヴィオレッティ
ハーミア ミュリエル・ジュスペルギ/レティシア・プジョル
ライサンダー シモン・ヴァラストロ/アレッシオ・カルボーネ
ヘレナ セ・ウン・パク/ファニー・ゴルス
ディミートリアス ヴァンサン・シャイエ/オードリック・ブザール
ヒポリタ イダ・ヴィキンコスキ/アリス・ルナヴァン
シーシアス オードリック・ブザール/フロリアン・マニュネ
ボトム タケル・コスト/フランチェスコ・ヴァンタジオ
タイターニアの騎士 カール・パケット/ステファン・ブョリオン
蝶々 アリス・カトネ/ミュリエル・ジュスペルギ
ディヴェルティスマン マリオン・バルボー、フロリアン・マニュネ/セ・ウン・パク、カール・パケット

pari1704a_07.jpg  (C) Opéra national de Paris / Agathe Poupeney pari1704a_12.jpg  (C) Opéra national de Paris / Agathe Poupeney
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pari1704a_13.jpg (C) Opéra national de Paris / Agathe Poupeney