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三光 洋 Text by Hiroshi Sanko 
[2017.11.10]

アリュを始めとするパリ・オペラ座のダンサー5人が、「枠」から「外」れたユーモア溢れるパフォーマンスを披露した

3e Etage  Théâtre Antoine アントワーヌ劇場
“Hors Cadre(枠外)“ François ALU、Samuel MUREZ
フランソワ・アリュ、サミエル・ミュレーズ:振付 他

2014年12月11日にフランスの有力日刊紙『フィガロ』は「パリ・オペラ座バレエ団の8人のホープ」と題したバレエ評論家アリアーヌ・バヴリエの記事を掲載した。将来のエトワール候補としてフランソワ・アリュ、ジェルマン・ルーヴェ、ユゴー・マルシャン、アントワーヌ・キルシャー、レオノール・ボーラック、八菜 オニール、イダ・ヴィイキンコフスキ、ジェニファー・ヴィゾッキの八人が取り上げられていた。それから3年近い歳月が流れ、8人のうちルーヴェ、マルシャン、ボーラックの三人はエトワールに任命された。
この時、記事のトップに取り上げられながらプルミエール・ダンスールのフランソワ・アリュのオペラ座での出番は限られている。今シーズンに入ってからの舞台は、バランシン振付の「ルビー」を9月にヴァランティーヌ・コラサント、八菜 オニールといっしょに踊っただけだ。12月11日から1月6日までバスチーユ・オペラで行われる『ドン・キホーテ』の予定配役表にも彼の名前はない。
そのアリュが自分でパリ市内の劇場街(マルセル・カルネ監督の映画『天井桟敷の人々』に出てくる犯罪大通りに近い)にあるアントワーヌ劇場を、10月8日と14日の二回にわたって借り、オペラ座のダンサー仲間たち(3e étage)といっしょに自主公演を行った。
3e étage(フランス語で4階)はコール・ド・バレエの控室があるガルニエ宮の4階から取られた。2004年にダンサーで振付家のサミュエル・ミュレーズ(カドリーユ)が創設し、オペラ座バレエ団の練習と舞台のない時間を使って活動を続けている。

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“Hors Cadre(枠外)“ (C) Julien Benhamou
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当日アリュの傍らで舞台に立ったのはタケル・コスト、クレマンス・グロス、シモン・ル・ボルニュ、リディ―・ヴァリシェスの5人。
スペクタクルは時計の針の音がチクタクと鳴って始まった。時間厳守を始め、規律を重んじるパリ・オペラ座バレエ団の舞台裏と練習に明け暮れるダンサーたちの日常が、短い台詞とマイムを使って皮肉たっぷりに描かれた。周囲からのいじめ、過食といったスケッチが次から次へと並んだ。もちろん、6人のダンサーたちはソロ、パ・ド・ドゥ、トリオ、アンサンブルをクラシック、コンテンポラリーからヒップ・ホップまでのさまざまなスタイルを6人が舞台狭しと踊った。
客席が一番沸いたのは、何と言ってもアリュが昇級試験でヌレエフ振付『ドン・キホーテ』のバジルのヴァリエーションを踊る場面だった。試験当日のように小さな鈴が鳴り、最初はダイナミックな完璧なデモンストレーション、次いで「日本のユーチューブにヒントを得た」やり方で故意にバランスを崩して踊ったが、この「失敗」も見事なパフォーマンスとなっていた。
アリュはまた、ジャック・ブレルのシャンソン『ブルジョワ』にベン・ファン・コーウェンベルクが振付けたソロでも演技派振りを発揮していた。
仲間の五人とも息がぴったり合い、ミュレーズの振付もユーモアにあふれ、舞台と客席が一体になり、通常のパリ・オペラ座バレエ団という「枠」から「外」れた和気藹々とした夕べとなった。満員の客席にはエトワールのリュドミラ・パリエロを始めとするオペラ座のダンサーたちの姿も散見され、人々の関心の高さが感じられた。
(2017年10月14日 アントワーヌ劇場)

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“Hors Cadre(枠外)“ (C) Julien Benhamou(ここまで すべて)

pari1711b_15.jpg アントワーヌ劇場(C)三光洋
『枠外』
音楽 ヨハン=セバスチャン・バッハ、ジョルジュ・ビゼー、ヨハネス・ブラームス、ジャック・ブレル、ウラディミール・ホロヴィッツ、フランツ・リスト、ルドヴィック・ミンスク、ザ・ミスターズ。サミュエル・ミュレーズ、ニコロ・パガニーニ、ジュゼッペ・タルティーニ、ジュゼッペ・トレッリ、トマゾ=アントニオ・ヴィタリ
台本 サミュエル・ミュレーズ
振付 マリウス・プティパ、ベン・ファン・コーウェンベルク、サミュエル・ミュレーズ
ダンサー フランソワ・アリュ、タケル・コスト、クレマンス・グロス、シモン・ル・ボルニュ、リディ―・ヴァリシェス、ユゴー・ヴィオレッティ

pari1711b_14.jpg カーテンコール(C)三光洋