ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Paris <パリ>: 最新の記事

From Paris <パリ>: 月別アーカイブ

三光 洋 Text by Hiroshi Sanko 
[2014.05.12]

オペラ座のダンサーたちが生まれてくる様子を垣間見せた、オペラ座バレエ学校公演

Ecole de Danse Spectacle パリ国立オペラ座バレエ学校公演
『Concerto en ré』Claude Bessy 『協奏曲ニ長調』クロード・ベッシー:振付
『Napoli-Pas de six et Tarentelle』August Bournonville 『ナポリ』パ・ド・シスとタランテラ オーギュスト・ブルノンヴィル:振付
『Scaramouche』José Martinez 『スカラムーシュ』ホセ・マルティネス:振付
『Yondering』John Neumeier 『ヨンダリング』ジョン・ノイマイヤー:振付

1713年太陽王ルイ14世の治世下に王立アカデミー音楽学校として創設された、パリ・オペラ座バレエ学校の年次公演が今年もガルニエ宮で行われた。
1987年からナンテールの新校舎で学んでいるプティ・ラ(小鼠)たちの晴れ姿を見ようと着飾った生徒の家族や友人、バレエ関係者が詰め掛け、会場には通常のバレエ公演とは一味違う独特の雰囲気に包まれていた。

pari1405a_01.jpg 『ジェンツァーノの花祭り』
(C)péra national de Paris/ Francette Levieux

最初はクロード・ベッシー前バレエ学校長が、1977年に学校公演を始めて行った際(当時の会場はオペラ・コミック劇場)に振付けた『協奏曲ニ長調』が演じされた。バレエ学校のレパートリーで唯一の全員参加の作品だ。
バッハの「クラブサン協奏曲第3番」というゆったりとした音楽に乗って、最年少の第6ディヴィジヨン(12歳未満)から最年長の第1ディヴィジヨン(18歳未満)までが、順次舞台に登場した。どの生徒からも踊る喜びが伝わってきた。
それにしても、伸びやかな肢体、整った容貌、集中力と条件のそろった子供たちが並んだ姿は壮観だ。加えて十代という身体の成長期だけに、たった一年の違いでも身体と技術がそろって進歩していくのが、手に取るように歴然と見える。最後に全員が渦巻状の輪になり、中央で少年たちが最年少の少女をリフトして終わると、会場から大きな拍手が沸いた。
次は『ジェンツァーノの花祭り』のパ・ド・ドゥと『ナポリ』からの抜粋「パ・ド・シスとタランテラ」。オーギュスト・ブルノンヴィル振付作品だ。
脱走した囚人の人質にされた恋人を森番が無事取り戻し、山から降りた二人が村の花祭りで喜びにひたる場面を、第1ディヴィジヨンのアナイス・コヴァシックとシュン・ウィン・ラムの二人が実に晴れやかに踊った。
『ナポリ』からの抜粋では、ヴェスビオ火山を遠望する港町の住民のダンスへの情熱が、パリ音楽院優等賞受賞者管弦楽団の躍動感のある演奏をバックに、6人のソロダンサーを中心に踊られた。

pari1405a_02.jpg 『ジェンツァーノの花祭り』
(C)péra national de Paris/ Francette Levieux
pari1405a_03.jpg 『ジェンツァーノの花祭り』
(C)péra national de Paris/ Francette Levieux
pari1405a_04.jpg 『ジェンツァーノの花祭り』(C)péra national de Paris/ Francette Levieux
pari1405a_05.jpg 『ナポリ』
(C) Opéra national de Paris/ Francette Levieux
pari1405a_06.jpg 『ナポリ』
(C) Opéra national de Paris/ Francette Levieux
pari1405a_07.jpg 『ナポリ』(C) Opéra national de Paris/ Francette Levieux
pari1405a_08.jpg 『スカラムーシュ』
(C) Opéra national de Paris/ Francette Levieux

20分間の休憩後はホセ・マルティネスが振付けた『スカラムーシュ』。題名のスカラムーシュはイタリア起源の仮面劇コメディア・デ・ラルテの人物で黒服をまとい、ほら吹きだが機転が利く。
作品はオペラ座バレエ学校の生徒たちが、午後のバレエレッスンを待っているところから始まり、初めて舞台に立つ夢を見るが、プロローグでは現実に戻ってくる。
アンドレア・サッリが芸達者なスカラムーシュを演じた。仲間の生徒たちは主人公に導かれて、まず仮面劇に、次いでオペラ座のレパートリーの王子や姫を嬉々として演じていた。『ジゼル』や『くるみ割り人形』といった、クラシック作品の有名な場面が織り込まれ、生徒たちにとって格好の作品だった。アニエス・ルテステュがデザインした衣装も舞台を華やかに引き立てた。
最後はジョン・ノイマイヤーが世界のバレエ学校の生徒たちを念頭に置いて振付けた『ヨンダーリング』だった。アメリカのフォスター作曲のカントリー・ソングがバリトンのトーマス・ハンプソンの表情豊かな歌声(録音)がノスタルジックに響いた。『ヨンダーリング』は「国境を越えて未知の土地での冒険へと歩みだす」という意味だそうだが、間もなくバレエ学校を卒業してプロの大人の世界へと歩みだそうとしている生徒たちの心境にぴったりと寄り添った作品だった。
十代からブルノンヴィル振付の最もクラシックな作品から、ノイマイヤーの現代作品に至る幅広いダンスで、身体を磨き上げることで、クラシックとコンテンポラリーの双方を高い水準でこなせる、パリ・オペラ座のダンサーたちが生まれてきていることを実際に目の当たりにさせられた夕べだった。
(2014年4月5日夜 ガルニエ宮)

pari1405a_09.jpg 『スカラムーシュ』
(C) Opéra national de Paris/ Francette Levieux
pari1405a_10.jpg 『スカラムーシュ』
(C) Opéra national de Paris/ Francette Levieux
pari1405a_11.jpg 『スカラムーシュ』(C) Opéra national de Paris/ Francette Levieux
pari1405a_12.jpg 『ヨンダーリング』
(C) Opéra national de Paris/ Francette Levieux
pari1405a_13.jpg 『ヨンダーリング』
(C) Opéra national de Paris/ Francette Levieux
pari1405a_14.jpg 『ヨンダーリング』(C) Opéra national de Paris/ Francette Levieux

『Concerto en ré』『協奏曲ニ長調(バッハ・クラブサン協奏曲第3番ニ長調)』
音 楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ
振 付:クロード・ベッシー(1977年)
ピアノ:エリナ・アキモヴァ
第1部:第6・5・4ディヴィジヨンの生徒と第3ディヴィジヨンの女生徒
第2部:第3ディヴィジヨンの男生徒と第3・2・1ディヴィジヨンの生徒
『La Fête des Fleurs à Genzano』『ジェンツァーノの花祭り』
音 楽:ホルガー・シモン・パウリ
振 付:オーギュスト・ブルノンヴィル(1858年)
装 置:バーバラ・クロイツ・パシアウディ
ダンサー:アナイス・コヴァシック シュン・ウィン・ラム
『Napoli-Pas de six et Tarentelle』『ナポリ』パ・ド・シスとタランテラ
音 楽:エドァード・ヘルステッド ホルガー・シモン・パウリ
振 付:オーギュスト・ブルノンヴィル(1842年)
装 置:バーバラ・クロイツ・パシアウディ
『Scaramouche』『スカラムーシュ』
プロローグと3幕とエピソードからなるバレエ
振付・シナリオ・装置:ホセ・マルティネス
音 楽:ダリウス・ミヨー
衣 装:アニエス・ルテステュ
ピアノ演奏:ガエル・サドゥーヌ トリスタン・ロフィシアル
スカラムーシュ:アンドレア・サッリ
『Yondering』『ヨンダーリング』
音 楽:ステファン・コリンズ・フォスター
バリトン:トーマス・ハンプソン(録音)
振付・衣装・照明:ジョン・ノイマイヤー(1996年)
演 奏:シュティーグ・ホルスト指揮パリ音楽院優等賞受賞者管弦楽団