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三光 洋 Text by Hiroshi Sanko 
[2013.01.10]

パリエロ、ジルベール、パケット、ガニオほかが華やかに踊った『ドン・キホーテ』

Ballet de l’Opéra national de Paris パリ・オペラ座バレエ団 
Rudolf NOUREEV、 ¨Don Quichotte¨
ルドルフ・ヌレエフ振付『ドン・キホーテ』

パリ・オペラ座バレエ団の11月16日から12月31日までの長期クリスマス公演はヌレエフ振付の『ドン・キホーテ』だった。ガルニエ宮での「フォーサイス/ブラウン」公演にエトワールの大半が参加した結果、昨シーズン、エトワールに昇進したばかりのリュドミラ・パリエロ(カール・パケットと6回、マチュー・ガニオと4回)とカール・パケット(リュドミラ・パリエロと6回、ドロテ・ジルベールと4回)がそれぞれ10公演に参加し、ウイーン国立歌劇場バレエ団からの客演カップル(マリア・ヨコヴレヴァとドニス・シェルヴィシュコ)も3公演を踊った。12月24日と26日に予定されていたスヴェトラーナ・ザハーロワは病気で来仏せず、初日はリュドミラ・パリエロとカール・パケットが踊った。若手ではマチルド・フルステー(スジェ)、ミュリエル・ズスペルギー(プルミエール・ダンスーズ)、アリス・ルナヴァン(プルミエール・ダンスーズ)、ピエール・アルチュール・ラヴォー(スジェ)、フランソワ・アリュ(スジェ)、ヴァンサン・シャイエ(プルミエ・ダンスール)が抜擢された。

pari1301a_02.jpg (C)Opéra national de Paris/Jeluien Benhamou

当初発表された配役が場合によっては上演数時間前になって変更されたのは、怪我人が続出したためで、有力日刊紙「ル・モンド」が「オペラ座ダンサーの怪我」について緊急調査記事を掲載したほどである。昨シーズン末にエトワールに昇進したミリアム・ウルド・ブラーム、エトワールのステファン・ブリヨン、マチアス・エイマンら本公演への参加が期待されたダンサーの多くが舞台に上がれなかったのは、残念な限りだった。
12月8日とフランスの映画館で実況中継された12月18日の公演を見た。リュドミラ・パリエロは第1幕のヴァリエーションから、赤の扇子を器用にかざし、きれいな脚と優れたテクニックによって、旅宿の娘らしいエネルギーに満ちた踊りを見せた。第2幕第2場のドン・キホーテの「夢」も、のびやかな肢体と技術の確かさとが一体になっていた。相手のバジル役はマチュー・ガニオ。最初気になったのは跳躍して着地するところで、顔をゆがませていたことで、後になって怪我をおしての出演だったことを知らされた。本調子のガニオによるバジルだったら、と惜しまれたものの、パリエロの圧倒的なエネルギーに励まされて、次第に調子を上げて、第3幕では息の合ったカップルとなっていた。
12月18日は映画館での中継公演とあって、主役二人はかなり緊張していたようだ。ドロテ・ジルベールはインタヴューで「映画館に来てくれたお客さんに日常の暗さをひと時でも忘れて楽しい時間を過ごしてほしい。終わったときに『ダンスってきれい』と思ってもらい、次には実際に劇場に来てもらえればうれしい。劇場ではダンサーの感受性がもっとよく伝わるから」と述べていたが、フェッテの速度がいつもに比べややゆっくり気味だったのは、やはりカメラが気になって慎重になったからではないだろうか。それでも、緊張は次第に解け、堂に入った町娘らしいおきゃんなところが、バジルへ投げる視線のちょっとした身のこなしによって表現され、全体としてキトリらしい像が描かれた。母親がスペイン人だというだけのことはある。カール・パケットは王子役がよく似合うタイプの気品のある踊り手だが、パートナーを実に丁寧にフォローするとともに、11月の初日以来からの疲れを見せない全力投球で床屋のバジルを踊りきり、カーテンコールではジルベールとともにほっとした表情を見せた。
ヌレエフ振付でかなり長いパントマイムの場面では、ユゴー・ヴィオレッティがユーモラスなサンチョ・パンサを、またエリック・モナンも間の抜けた滑稽な金持ちの求婚者ガマーシュを巧みに演じて場内の笑いを誘っていた。
カラフルな衣装と地中海の陽光が射すスペインの広場や風車の登場する舞台装置をバックに、オペラ座バレエ団のはなやかな群舞によるスペインのさまざまなダンスを満喫した観客は、大きな拍手でダンサーたちに送っていた。
(2012年12月8、18日 バスチーユオペラ)

pari1301a_03.jpg (C)Opéra national de Paris/Jeluien Benhamou pari1301a_06.jpg (C)Opéra national de Paris/Jeluien Benhamou
pari1301a_07.jpg (C)Opéra national de Paris/Jeluien Benhamou pari1301a_15.jpg (C)Opéra national de Paris/Jeluien Benhamou
pari1301a_04.jpg (C)Opéra national de Paris/Jeluien Benhamou pari1301a_16.jpg (C)Opéra national de Paris/Jeluien Benhamou pari1301a_17.jpg (C)Opéra national de Paris/Jeluien Benhamou

『ドン・キホーテ』
音楽/ルドヴィッヒ・ミンクス
音楽編曲/ジョン・ランチベリ
振付・演出/ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパの原振付による)
装置/アレクダンドル・ベリアエフ
衣装/エレナ・リフキナ
照明/フィリップ・アルバリック
演奏/ケヴィン・ローデス指揮 パリ国立オペラ座管弦楽団
配役/(ダブルの場合は12月8、18日の順)
リュドミラ・パリエロ/ドロテ・ジルベール=キトリ
マチュー・ガニオ/カール・パケット=バジル
ヤン・シャイユー/クリストフ・デュケンヌ=エスパーダ
ローラ・エケ=大道の踊り子
ギヨーム・シャルロ=ドン・キホーテ
ユゴー・ヴィオレッティ=サンチョ・パンサ
エリック・モナン=ガマーシュ
アレクシス・サラミット=ロレンツォ

お詫び
一部、写真キャプションに誤りあり修正させていただきました。ご覧いただいた皆様、関係者の皆様には大変ご迷惑をお掛けいたしました。謹んでお詫び申し上げます。
※修正箇所:写真5枚目「リュドミラ・パリエロ」→「ドロテ・ジルベール」(2012.2.12)