ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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三光 洋 Text by Hiroshi Sanko 
[2011.07.11]

動きと光の変化によって生命のほとばしりが感じられた『レイン』

Ballet de l’Opéra national de Paris
パリ・オペラ座バレエ団
Anne Treresa de Keersmacker " Rain"
アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル振付『レイン』
pari1107a01.jpg (C)Agathe Poupeney/Opéra national de Paris

2001年ローザスによって世界初演されたアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマケール振付の『レイン』がパリ国立オペラバレエのレパートリーに入った。
ケースマケールが自作をローザス以外のバレエ団に委ねた初めてのケースだ。「ダンスは特定の踊り手のために振付けられている。これを別の踊り手たちによって再度上演することは重要だ。それも、新しい世代のダンサーに託することで、他の諸芸術と違って公演が終わった途端に消えてしまうダンスが生き続けられるようにする意義がある」とインタヴューで心境を打ち明けている。このために、ウルスラ・ロブ、クリントン・ストリンガーをはじめとするローザスのダンサーが来仏し、振り(エクリチュール)を伝達した。

pari1107a02.jpg (C)Agathe Poupeney/Opéra national de Paris

真珠を束ねたような簾が天井から半円形に下がり、内部と外部を分かっているが、<すだれ>ゆえに閉じていると共に開かれた空間を構成している。この重みのない、きれいな筋に光が当たると、あたかも雨が降っているかのように見える。周囲には透明の椅子以外何も床には置かれていない。
7人の女性と3人の男性とが現れるが、3人と7人、4人と6人という二つのグループに分かれて動く。雨粒が一つでは雨にならないように、これと決まったソリストはいない。単純な音型を果てしなく繰り返すライヒ作曲のミニマリスムの音楽に乗って、エレガントな動きがあくまでも軽やかに流れていく。二分間の女性的なパターンと二分間の男性的なパターンとが組み合わされ、メビウスの帯のように終わりのない動きとなるように構成されているが、客席からは微妙なニュアンスの変化としか見えない。途中でダンサーが歩いたり、走ったりしてテンポが変わるが、これは音楽の休止に相当するらしい。
わずか70分だが、途中で衣装が何度も変えられ、肌色に近い色から次第にフクシャに、最後には銀色を帯びるように変化していった。
身体の動き、光と色の変化によって「生命のほとばしり」が肌で感じられ、舞台上のエネルギーが70分の間に客席にも浸透し、照明が消えた途端に大きな波を思わせる拍手が客席から舞台に向かって送り返された。 
(2011年6月3日 ガルニエ宮)

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Photos:(C)Agathe Poupeney/Opéra national de Paris

音楽/スティーヴ・ライヒ Music for 18 musiciens
振付/アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマケイル
装置・照明/ヤン・ヴェルヴェイヴェルト
衣装/ドリース・ファン・ノーテン
ジョルジュ・エリー・オクトース指揮アンサンブル・イクトゥス
シネルジー・ヴォーカルズ合唱団
音声エンジニナ/アレックス・フォスティエ

出演ダンサー/リュドミラ・パリエロ、ミュリエル・ジュスペルギ、ヴァンサン・シャイエ、オーレリア・ベレ、ヴァレンティーヌ・コラサント、ミテキ・クドウ、ニコラ・ポール、ダニエル・ストークス、アメリー・ラムルー、レオノール・ボーラック