ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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三光 洋 Text by Hiroshi Sanko 
[2009.11.10]

ガルニエ宮の奥深くに入り込んだカメラが映した現実

La Danse Le Ballet de l’Opera national de Paris
映画『パリ・オペラ座のすべて』
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パリの地下鉄やバス停にきれいなポスターが貼ってあるのに気が付いて、映画『パリ・オペラ座のすべて』をパリ市内の映画館で見た。原題は『ラ・ダンス、パリ国立オペラバレエ団』。大きな映画館で夕方のいい時間帯だったが、遅れて来た人を入れても観客はまばらだった。
映画はドキュメンタリーを専門とするフレデリック・ワイズマン監督が2007年に84日間かけて撮影した2時間38分の大作である。普段、ガルニエ宮の内側に入って制作の現場を見ることは容易でない。それだけに、客席からはうかがうことのできない部分への切り込みに大いに期待した。
ガルニエ宮の外観、丸天井の真下にある練習室、螺旋の裏階段、公務員食堂(パリ国立オペラはダンサー、オーケストラ団員、裏方スタッフ、事務職に至るまで多くが国家公務員)、地下の湖を泳ぐ魚たち、ブリジット・ルフェールブル芸術監督の事務所、屋根の上にある養蜂場、清掃担当者がゴミを拾っている終演後の客席など場面はめまぐるしく変わる。しかし、いずれの場面も断片的で、最後まで芸術創造のプロセスとして収斂しない。主観を交えないのを身上としているドキュメンタリー作品であるにせよ、撮影者の視点が定まっていないのではないかと感じられた。
ブリジット・ルフェーブル芸術監督の仕事が、この映画では何度も取り上げられている。普段、表に出てこない部分だけに注目に値する。一人一人のダンサーに心を配りながら、プログラムや振付家の選択したり、ダンサーの昇進を決定するだけでなく、スポンサーのアテンドやダンサーたちの年金についての国との交渉も行う。まさにパリ国立オペラ座バレエ団の「影の主役」である。これだけで一つの短いドキュメンタリーになりうる興味深いテーマだが、他の映像の間に挟みこまれる形となって、ポートレートとして輪郭がぼけてしまったのが惜しまれた。