ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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三光 洋 Text by Hiroshi Sanko 
[2009.06.10]

オペラ座にアシュトン版『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』、フォーサイス、シェルカウイ作品他も登場

BALLET de l’OPERA de Paris
パリ国立オペラ座バレエ
Frederick Ashton « La Fille mal gardée »:フレデリック・アシュトン『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』

音楽 ルイ・ジョセフ・フェルディナン・エロルド
編曲 ジョン・ランチベリ 
振付と演出 フレデリック・アシュトン 
装置と衣装 オズバート・ランカスター
照明 ジョージ・トムソン
パリ国立オペラ座バレエ団
バリー・ワーズワース指揮 パリ国立オペラ管弦楽団

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パリ国立オペラ座バレエのシーズンの最後を飾るのはフレデリック・アシュトン振付の『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』。1789年7月1日にボルドー・オペラ座で初演されたこの作品は「バレエ・パントマイム」というジャンルの特徴をよく伝える作品として知られている。
「バレエ・パントマイム」はそれまでの華美な装いによる「ダンス・ブリアント」に対し、「動作は心の動きを伝えなければならない」という18世紀啓蒙主義哲学者たちの主張を反映している。従来の観客の目をたのしませるだけのディヴェルティスマン(座興)とは一線を画し、演劇における台詞やオペラにおけるアリアと対抗できるような語りの可能性をバレエに与えようとする新らしい試みだった。

この作品の筋は極めて明快だ。「豊かな未亡人シモーヌの一人娘リーズが母親の意思に逆らって相愛の貧農コラと結ばれる」このわずか一行にようやくできる物語が仕草や表情、身体によって「語られる」。
作曲家のエロルドは19世紀前半にオペラ・コミックの作曲家として活躍した。台詞劇と音楽劇が交互にあらわれるオペラ・コミックはフランス独自のジャンルであり、エロルドは2007年にパリのオペラ・コミック座で復活上演が行われた『ザンパ あるいは大理石の許婚者』にみられるように、優美な旋律で知られる。この演劇的要素の強い歌劇の分野に通じていたことは、エロルドのバレエ音楽に明らかなドラマの感覚と無縁ではない。
パリ国立オペラ座バレエでは1828年にジャン・ピエール・オーメール振付版が上演されたが、1850年代にはレパートリーからいったん消えてしまった。その後一世紀以上を経て1981年にハインツ・スポエルリの振付で復活し、1987年にはジョセフ・ラッジーニ振付の版が上演された。フレデリック・アシュトンの振付は2007年6月22日にパリ国立オペラ座バレエのレパートリーに入り、今回はその再演である。
プルミエ 6月27日 19時30分開演
公演日 6月29・30日 7月1・2・3・4・6・7・8・9・10・11・13・14・15日 19時30分開演

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THEATRE de La Ville
パリ市立劇場
Wim Vandekeybus /Ultima Vez « Création 2009 »  creation
ヴィム・ヴァンデケイビュス /ウルティマ・ベス「7人のダンサーのための2009年の新作」世界初演

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執拗な格闘、胸と胸のぶつかり合い、抱きしめ合うトリオ、狂ったような騎行といった衝撃的で、激しくもしなやかなムーブメントがヴァンデケイビュスの振付の特徴だ。今回の新作では「今までにない別の身体性をさがしたい。異なった個性と巡り合ってカンパニーを再構成したい。世代間の衝突に興味がある。世間でよく言われているのとは違い、叡智は老人のものではなく、無邪気は子供の特権ではないのだ。」と語っている。舞台上の三人のロックミュージシャンの耳をつんざくような音響に乗って、エネルギーが炸裂するダンスがはじける。
公演日 6月9日から13日

Anne Teresa De Keersmaeker  « Keeping Still Part2»  creation mondiale
アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマケール『 Keeping Still Part 2』 世界初演

公演日 6月24日から7月3日

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THEATRE des Abbesses 
パリ市立アベス劇場
Ea Sola« Le corps blanc»  creation
エア・ソーラ『白い身体』世界初演

エア・ソーラはベトナムの古い伝統に範を取った儀典的なダンスで、欧米の観客を魅了してきた。より豊な生活を求める加速度的な変化の中にあるアジアを渉猟し、この現代性が人間をどこに導くのかを問おうとしている。新作『白い身体』は振付家がフランスに到着してもっとも大きな衝撃を受けたエチエンヌ・ドゥ・ラ・ボエシーの『意図的な隷従について』を通じて、専制をテーマとしている。三人の読み手と三人のアジア人ダンサーの身体と音楽がその素材である。「欧州がこの世界の混乱の中で時間をかけて考察することで、個人を守り、詩を守ることが最終的には世界のすべての人々のためになる」というのがエア・ソーラのメッセージである。 
公演日 6月9日から13日

Johanne Saunier « ERASE-E(X) »  creation
ヨハンネ・ソーニエ「ERASE-E(X)」 世界初演

公演日 6月23日から26日

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Vincent Dunoyer/Anne Teresa De Keersmaeker « Sister »  2007
ヴァンサン・デュノワイエ/アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマケール『シスター』 2007年作品

振付 ファンサン・デュノワイエ
ダンサー ヴァンサン・デュノワイエとアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマケール
公演日 6月30日から7月3日

THEATRE NATIONAL DE CHAILLOT
国立シャイヨ劇場
Ballet Royal de Flandre/William Forsythe « Impressing The Czar»
フランドル王立バレエ団 ウイリアム・フォーサイス『インプレッシング・ザ・ツァー』

音楽 トム・ヴィレムズ、レスリー・シュトック、エヴァ・クロスマン・ヘフト、ヴェートーベン
装置 ミハエル・シモン
衣装 フェリアル・ミュニック
音響 ベルンハルト・クライン
フォーサイスは自分が信頼する特定のバレエ団に作品を委ねてきた。その一つが、かつてフォーサイスの下で踊っていたキャサリン・ベネッツが芸術監督を務めているフランドル王立バレエ団である。「『インプレッシング・ザ・ツァー』は5部からなり、フランスの王朝時代に栄えたオペラ・バレエと1950年代に兆点を迎えたアメリカのミュージカルという二つの異なる形式に依拠し、クラシック・ダンスにフォーサイスならではの修正、見直しがなされている。舞台の上をバレリーナのトーダンスがすべり、シルエットの軸は崩されている。特にテンポの速さは群を抜いている。高度の技術なしでは踊れないのがフォーサイスの作品だ。ムーブマンが脊椎を通りぬけてダンサーの先端に到達する。白のシャツに灰色のスカートという制服をまとった34人のダンサーたちにより、ミュージックホールへのオマージュが繰り広げられる。
公演日 6月18日から20日

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Sidi Larbi Cherkaoui « Sutra »
シディ・ラルビ・シェルカウイ『スートラ』

シディ・ラルビ・シェルカウイは30歳を過ぎたばかりだが、ベルギーのコンテンポラリー・ダンスを日々塗り替えている。テレビの番組に登場するかと思うと、ディスコテックにも姿を現す。ジュネーブ・オペラ・バレエ団、モンテカルロ・バレエ団といった国際的なバレエ団との作業を通じ、シェルカウイは音楽性を強く打ち出した作品を発表してきている。
『スートラ』は武道に憧れた幼年時代の感覚を探求したもので、中国の少林寺の僧侶に出会い、西欧流の肉体と精神とを対立を拒否している。シェルカウイは「振付家、ダンサーとして、自分を取り巻く自然と一体化した少林寺の僧侶たちに特有の動き、および自分を虎や蛇に内的に変身させる彼らの能力に触発されてきた」と語っている。照明に大きな役割を委ねたアントニー・ゴームレーの装置を使い、音楽はポーランドの作曲家シモン・ブルゾスカによる弦楽と打楽器を用いた作品を使用している。
公演日 6月25日から27日

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